VOGUE、UNIQLO、THREE。日本の広告フォト・ムービーを牽引するフォトグラファー&バンタデザイン研究所OB・Hiro Kimura氏講演会レポート【バンタンデザイン研究所】
「皆さんの貴重な時間をいただいて、光栄です」と挨拶するHiro Kimura氏。バンタンデザイン研究所ファッションスタイリスト科出身で、
日本を代表するフォトグラファー、ムービーディレクターです。
「基本的には、カメラマンです。写真を撮影して生計を立てています。雑誌を撮影したり、映画のポスターを撮ったり、
アーティストのCDジャケットを撮ったり。
広告ではUNIQLO、THREEなどを撮影しています。最近撮った人でいえば、クリスティアーノ・ロナウド。
イタリア・トリノにいるので撮影しに行きました。あのクラスになると広告を撮影するのも大変なことで、9カット広告を20分で撮影するという
難儀なことになりました。
<WORKS>
「矢沢永吉さんのCDジャケットを撮影しました。6月末、衣装も4回変えて撮らせていただきました。『お前写真上手くなったな』と言われましたね。
他にも、西武のビルボートになった『渋谷を超える、ミライのシブヤ。』は、希望を未来につなげるための作品です。緊急事態宣言中の渋谷にて、
西武を始め渋谷区の協力のもと実現しました。
<LIFE WORK:2021年6月に開催する写真展「100 JAPANESE MAN」>
商業写真と並行して、人の生きざまを切りとる「100 JAPANESE MAN」という表現も続けています。「単なる撮影なら、ロボットでもできる時代。
それ以上に写真として価値があるものは?と考えています。ひとつの表現として、被写体と向き合い短い時間で言葉を掛け合いながら
セッションしていくことだと思っています。僕は、美しさは楽しいところにあると思っていません。人の悲しみに宿ると思っています。いかに挫折して傷
をおってきたかが大事になる。」
<今の活動に至った経緯>
「僕は、もともと茨城の野球少年でした。ごく普通の家庭に生まれ育ち18歳まで甲子園を目指していて、野球しかしていなかったです。
バンタンデザイン研究所を見つけて、自分にもチャンスがあるんじゃないかと思って夢をみて上京しました。とにかく負けず嫌いでした。
課題も頑張りました。
日本では、エネルギーが昇華できないと感じ、21歳でN.Yに2年半行きました。世界中からエネルギッシュな人が集まっていて、刺激を受けました。
24歳で帰国し、スタイリストの仕事を始めました。
矢沢永吉さんのスタイリングをするのが目標でした。さまざまな努力をし、28歳で矢沢さんのスタイリストになりました。
ひとつ夢が叶ったことがキッカケになって、自分のキャリアに満足したんです。KAT-TUN、浜崎あゆみさんなど
有名なアーティストにスタイリングさせてもらって、ここまでやれたと納得がいきました。
また、ある写真家さんとの出会いがありました。本当に素晴らしい写真家です。
矢沢永吉さんとのシューティングも素晴らしいセッションでした。『ああ、セッションはこういうことなんだな』と。
服を着せるのもすごいけれど写真が好きだ、こういうセッションができれば自分を高めることができると思いました。」
また、学生からの質問にも真摯に答えてくださいました。
―――――― 写真を撮るときに意識していることは?
「自分がその人と時を過ごした時間が残ります。生きた証。爪痕を残したい。きちんと向き合って、心の対話をしていくことです。
白い壁を撮っても、Hiro Kimuraの写真です。撮るものには、僕自身が映し出されると思っています」
―――――― 広告を撮るときに、構成や画角など心がけていることはありますか?
「1つだけ。人間力なんですよ。FILAの服が欲しい!と中高生の購買意欲をそそらなきゃいけない。
つまり、気持ちが分からなくてはいけない。43歳のおじさんが、中高生の気持ちを理解するのは人としての力だと思う。いかに広告を見る人の
気持ちになれるかだと思います」
最後に、「僕の好きな岡本太郎さんの本です。大事にしている本です」と、『ある身体障害者の音楽家』にまつわる一編の詩を読み上げました。
「チャンスだなと思います。手もあるし、目も見える。活かさない手はないのかなと思います。
満たされないこと、劣等感があることは決してマイナスなことではありません。自分を信じて。これだと思うことを見つけてやっていこうよ。
やらないのは、もったいなさすぎる。そして、いつかこの中から一人でも光る人が出て、その人が僕と同じように後輩に向かって話せたら
最高だなと思います。そう思って、今日来ました。こんなに心震えることはないと思います。」と締めくくりました。
偉大な先輩から発せられる強いメッセージは、在校生の心にストレートに届いたはず。書き留めておきたくなるような言葉の数々を、
ぜひ胸に留めて「坂道を選ぶ」モチベーションにしていってください!