スタイリストTEPPEI氏が在校生と対話型講義。スタイリングで大切にしていること、恩師との思い出、キャリアについて語る【バンタンデザイン研究所】

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「会話ベースで講義を始められたらと思います。形式的な授業をするよりも、糧を持ち帰って欲しいです」と切り出した、バンタンデザイン研究所卒業生・スタイリスト TEPPEI講師。「不特定多数にではなく、限りなく1対1の一体感に近いように、集中して話します。怖い雰囲気だと思いますが、オープンマインドな人間です。緊張なさらずに。年齢は、40歳で20年前に恵比寿校舎に2年通っていました。僕自身は、20年前は無気力でうまく授業に参加できていなかったです。スタイリストとしては、あれよあれよという間に18年やっています。在学中のことを聞いていただけると、意外なほどチャンスやヒントがあると思います。パーソナルなことを相談するのは恥ずかしいかもしれませんが、胸を張って質問していってください」と、スタイリスト専攻1年次・2年次との双方向授業がスタート。

講義は、学生からの質問一つひとつに答えていきます。

――― TEPPEIさんは、熱量高く20年近くお仕事を続けられていると思います。その秘訣はありますか。自分自身は、制作意欲に波があり、時間を浪費してしまうときもあります。

 

TEPPEI講師「質問に質問で返して申し訳ないですが、ご自身のモチベーションが高まるのはどういうとき、低くなるのどういうときですか?」「えっと……」と言葉を詰まらせるメンバーに、TEPPEI講師「即答できないということは、自己対話ができていないです。自分について、まずご理解される必要があります。20歳のとき、僕もそうだったと思います。お金も稼げないし、どうなるんだろうと思いました。例えば、コンテストで大賞を取ったとしても、それが人生の約束にはならないじゃないですか?授業のプレゼンで、もしも健全な伝え方でアドバイスをされて、否定的にとらえるのは誰かと問われれば、それは自分自身でしかないわけです。表現を通じて自分を見てほしいとか、考えたことを何故分かってくれないんだろう?悔しいという想いは、今の僕でもあります。これは、職業の運命にちかく抗えません。あとは、僕がどう考えて立ち回るかでチャンスは生まれると思っています。あなた方のブランディングを、社会が評価している実感がないから、『ストイックに』と言われても難しいと思います。であれば、自分のポテンシャルと、戦略的な部分と2軸で分けてみましょう。冷静に頑張ることが大事なんじゃないかなと思います」と、最初の質問から、非常に熱意をもって答えます。

 

「社会に出ると気を遣ってくれますが、仕事がくるかこないか評価してもらえるかは、引き続きシビアです。例えば、皆さんが、『400円でまずい飯を食べてきて』って言われたら嫌じゃないですか?400円でも嫌ですが、スタイリングで数万、数百万といただくこともあります。ファッション業界であれば認知していただけていることも含めて、服に対しての恩は、とんでもないんです。なぜ、そんなにストイックになれるかというと好きだからです。あえて、クリエイターともアーティストとも言いませんけれども、これでしか生きていけないと思っています」

 

――― 授業でスタイリングを組んでプレゼンをしますが、自分が発言することに、どうしても自信がもてません。

「きっと自分が大切にしている何かがあると思います。なので、ファッションの世界にきているのではないでしょうか。でも、そこを認めてもらえるかどうかは別ですね。切ない話ですが、人は僕らがつくる表現物に興味がないから、刺さる人にだけ刺そうと自信を持って。大好きでブラッシュアップされていき、商業的価値があれば誰かが仕事をお願いしてくれます。もしかすると、『自分を分かってもらうべきだ』みたいに思いすぎているかもしれません。仮に、全力を出したもので批判された、手を抜いたものを大拍手された。どちらがいいでしょうか?多分、前者だと思いますし、それはもつべき観念だと思います」

――― 課題を、そつなくこなすことができます。しかし、講師から「こだわりが見えない」「多角的な提案をしろ」と言われます。どうしたら、こだわりが生まれますか。

「対象物がないので、具体的には言えませんが……。僕の時代も、講師は同じことを指摘していました。こだわりがないわけないと思いますので、そこに気付いているだけで前向きだと思います。美的観念が整理されるにはリサーチは必要です。例えば僕も、本を読め、写真&雑誌を見ろ、映画を観ろと言われました。1年間、毎日見ていたけれど、それは普通です。料理人も、アスリートもエントリーするにあたっての『導入項』があり、それには抗えません。思っている以上に調べられていない可能性もあります」

――― 幼少期から現在までに見ていたことが20歳くらいでクリエイションとして反映されるのかなと思います。クラスメイトの作品を見ていると、自分が見ていないものに対して不安になります。調べたもので補完できるのか?アドバイスをいただけたらと思います。

「弱点はストロングポイントと表裏一体です。知らなかったことに対して吸収できているのであれば相当いいです。僕自身は、母親譲りでものすごく不安症です。これ自体はどうにもなりません。なので、何をしているかというと準備です。また、不安はブーストにもなります。弱点をそもそも変えるという発想よりも、何がStrong Pointになるか考えてみては?」

――― 1年次でスタイリストアシスタントとして現場に行っています。TEPPEI講師がアシスタントにつく人に対して、期待することは。

「インターン期の自分は、何も聞かないほうがいいくらい考えられていませんでした。今のあなたのほうが、よっぽど優秀だと思います。距離感やなんかはケースバイケースすぎて、自分がもっと成熟すれば、自然と判断できるようになります。消極的な人が多いと思うので、チャレンジできればパーフェクトだと思います」

――― 1年次です。講師に、「入学したときとスタイリングが変わっていない」と言われました。努力不足で、「実力がないのかな、スタイリストに向いていないのかな?」と考えてしまい、落ち込みます。

「それは、みんなそう。不安な自分に対して否定的であっても仕方がありません不安だったら勉強してください。そこから結果と自信を持てるかどうかが始まります。頑張れる自分をどう作るかです。何かに関して、誰かより劣っていることは生きていると、ずっと起こります。辟易して落ち込んでいると感情に流されて立ち止まっちゃいます。自分を寛容に受け入れることが必要ですし、頑張れる自分をどう作るかということだと思います」

――― 感情が高ぶってしまいました。自分に自信がなく、自分を表現するのが苦手です。2ターム(学期)を終えて、正直成長していない自分を感じます。でも頑張ろうと思います。3日前に、講師からボロクソに言われて「もうダメだ。逃げたい」と思いました。このままスタイリストを目指していいのか?才能がないなら、アパレルショップで働いて正社員を目指そうかとも考えました。家族にも相談しましたが、ファッション業界について詳しくないので、相談できません。こう話すと、メンバーは涙をぬぐいました。

「最高だと思います。辞めるか悩んでしまうくらい思い悩んでいること。また、発表することには勇気もいります。センスや表現物など目に見えないものに対する訓練や評価、これは職業の性(さが)です。プロになっても等しく、その側面はあります。スタイリストになりたいんでしょ?ファッションが好きなんでしょ?だからこそ、傷ついているんだと思います。重要視していなことに対しては、リバウンドがこないと思います。それくらい大切にしていることに対してリスペクトします。どういう授業で、どんな講師がおっしゃったのかが分かりませんが、それに対しては全く気にしなくていいです。感情を抜きにして、『確かにそうだ』と思える評価がありますか?(在校生が頷くのを見て)それだけでいいじゃん!スタイリストになりたい気持ちに対して、否定しているわけではありません

―― TEPPEI講師は、辞めたい、逃げたいという瞬間はありましたか。

「あったと思います。今の僕を見ていてると分からないかもしれませんが、ずっと強かったわけではありません。切ないけれど、そういうものだ、というところまでいけてしまったのかも。饒舌でスラスラ答えている僕も、解決法があったら悩まないと思います。感情の起伏は、きっとそれが大切だから訪れるわけじゃないですか。同年代の誰かは、なかなか見つけられないかもしれません。いきつくところ、ファッションに夢をもらい仕事にしたいと思っているところで根本は一緒だと思います。多分、逃げたくないから簡単に答えが出ません。でも、胸を張れる瞬間が出てくると思う。悲劇的な状況でも大事にしているなら、俺は大切にしたほうがいいと思います。1カ月頑張って、ダメだったら連絡ください」

――― アシスタントにつかずに、そのまま独立されて生きていけると思ったのですか。当時、どのように考えていたのか知りたいです。

「アシスタントについていないのは、やり抜く自信がなかったからです。価値観も確立していなかったし、実績もありませんでした。周りがアシスタントをする中、俺はいいわと。建前上、『センスは自分でつくるもんじゃん』と言っていました。それは嘘で、門を叩いて教えてもらい、当時は休み給料も少なく食べられない、寝られない環境でした。それなら、自分でやろうと思いました。今思えば、コトの重大さを分かっていなかったバカです。どうしても技術職なので職人的側面を含みます。考えはアスリートに近いと思います。プロになるというのは、その分野に対してある程度の価値があるからこそ、お金になります。スクールで2年頑張ったのは大したものですが、それですぐに世間がお金を払うかというと『もうちょいだよね』というのはあります。また、スタイリストはサービス業だと思っているので、矢印は常に自分からとクライアントからの二軸です。お客さまには、どういうサービスを提供するのか?向こうに商業的価値を見出してもらわないと成立しません」

――― スタイリングを組むうえで、大切にしていることは。

「スタイリング、服を通して相手に喜んでもらうこと。そのうえで自分の考えと相手がのぞむものが異なるケースがあります。俺は『これ通りにしたい』言われることに対して、基本的にそれ通りにはしないです。それは、お客さまの会社の社員でもなく、組織にも属していないので、自分の立ち位置からの意見を申し上げることができます。コミュニケーションの質が高く、議論が深まり、最終的にめっちゃ格好いいものが生まれるのであれば、お仕事をまた依頼したくないですか?プロは、そうあるべきだと思っています

――― 2024年2月に卒業制作展(通称・卒展)が行われます。TEPPEI講師は、在学時、卒展に向けてどんなことを考えていましたか?

「自分のスタイリングがイケているから、誰よりも優勝したいと思っていました。実際、卒展では最優秀賞は取れませんでした。当時、指導してくださっていた‏‎若林伽椰(かよ)講師は僕の恩師です。ものすごく厳しかったですが、僕のことをとても評価してくださいました。卒展にのぞみましたが、ゲスト審査員が評価し、自分の名前は呼ばれませんでした。‏‎表彰式が終わったときに、伽椰さんが『ちょっといいですか』と、わざわざ登壇して『TEPPEI、めちゃくちゃ良かったよ』と言ってくれたんです。学業を頑張っていたことに対する賛辞です。卒展のショーが終わり、悔しくてどこか分からない場所で泣いていたら伽椰さんから電話がかかってきました。誰かの印象に残れたことが救いでした。スタイリストとして上手くいかないときも、‏‎‏‎伽椰さんに報いたい気持ちが特効薬になっていました。なので、皆さんにも等しく大丈夫だよと言えます。評価は移ろいやすいです。たとえ、誰も分からなくても『俺はこれ好き』と思う権利があります。そこまで自分が作れるかどうかという話だと思います。それができれば、卒展で賞が取れなくても約束されていると言えます。大いに悩んで、一人でも多くその境地に到達してほしいと思います」と、心からのエールを送りました。

在学中から、業界で活躍するプロフェッショナルたちから、指導を直接受けられるのもバンタンデザイン研究所で学ぶ価値。

 

偉大な先輩たちとの繋がりを大切に、ぜひ能動的に学んでいってください!

 

【PROFILE】

TEPPEI

@stylist_teppei

1983年生まれ、滋賀県出身。高校卒業後、バンタンデザイン研究所スタイリスト専攻に入学。卒業と同時に原宿「ドッグ」のプレスに就任し、2000年代初頭のスナップブームで注目を集め、国内外で圧倒的な人気を誇る。その後スタイリストとして本格的な活動を開始。独自のファッション哲学と思考で、アーティストやブランドから支持を得ている。スタイリングの他、アーティストイメージ、ヴィジュアルディレクションにも携わる。

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