ミュージシャン、ファッションブランドがコラボを熱望する、人気アーティスト・アートディレクターとんだ林蘭さん講演会【バンタンデザイン研究所】
アーティスト・アートディレクターとして活躍するとんだ林蘭さんの講演会が開催されました。
アーティストのアルバムのジャケットアート、MVのディレクションをはじめ、
人気ファッションブランドとのコラボレーション、ロンドン発コスメブランド・リンメルの限定アイシャドウやリップをデザインするなど、
フィールドにとらわれずに表現を行う気鋭のアーティストです。
何を思って、どんな経路をたどって、今に至ったのか?
自身の言葉で存分に語っていただきました!
―――― 今日はよろしくお願いします。とんだ林さんって、お名前は本名ですか?
「いえ、レキシという名前で活躍されているミュージシャンの池田貴史さんにつけていただきました。」
―――― どんな意味があるのでしょうか。
「大きな理由はないと思います。実は、私は最初、漫画家になりたかったんです。
それでペンネームを付けてもらい、いくつかあった候補の中で一番いいなと思った名前を選びました。」
―――― 何歳のときですか?
「25歳のときです。今は33歳なので、8年くらい経ちますね。」
―――― 肩書きは何ですか。
「アーティストとかアートディレクターとか、肩書を求められる状況によって使い分けています。」
<WORKS>
「AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY-」DVDジャケット
「音楽のお仕事の場合は、アーティストご本人とお会いして、
想いをうかがったり曲を聴いてからアイディアを考え、先方にラフをなげます。
普段からゼリーの中にいろんなものを入れて遊んでいるので、表現方法のひとつと言えるかもしれません。
この時はゼリーの中にブラジャー、メモ、リボンを入れました。」
他にも、ビッケブランカと岡崎体育さんの「化かしHOUR NIGHT」のアートディレクション、
Mulberryの日本のカプセルコレクションのコラージュムービーを紹介。
さらに、仕事で使っている貴重なラフも公開。
tricotのオリジナルフルアルバム「10(ジュウ)」のアートワークラフ、ビジュアルブック「HYPER CHEESE」では、
中学時代の同級生・渡辺直美さんとコラボレーションも。
―――― ラフは、けっこうザックリした感じなのですね。
「そうですね、殴り書きみたいなラフにしています。というか、こういったものしか書けないからなんですが。。
あとは、自分のラフを見てくれたフォトグラファーさんが思いつくアイデアをミックスしていくパターンも多いです。
一緒に作る人たちから『自分には思いつかないもの』を引き出せたらいいなと。」
2018年には「ZOFF」サングラスコレクションで、ビジュアルのディレクションを担当。
「このお仕事をキッカケに、写真のディレクションを担当するようになりました。
それまでコラージュやドローイングがメインでしたが、
『予算もあるし、実写でやってみたら?』とフォトグラファーさんに背中を押していただけたのがキッカケ。
一発撮りで、準備も大がかりなので大変ですが、すごく楽しいです。
レタッチャーさんが入ってくれると表現の幅も広がります!」と、新たな表現手法を獲得していったそう。
また、直近のお仕事として、シンガーソングライターあいみょんさんの『マシマロ』MVについても言及。
「全編コラージュで仕上げた作品です。編集専門の方に入っていただいて、動きの一つひとつにこだわっています。
MVはずっと残るものだし、私も何年も前のMVを見たりするので、携われて嬉しいです。」
―――― 最近ではVANTAN CUTTING EDGE 2020のポスターもデザインしてくださいましたね。
「そうなんです。色々な職業のモチーフを入れる、ということは決まっていましたが、それ以外は自由に作らせていただきました。」
―――― お仕事を始めたキッカケはなんでしょうか?
「服飾の専門学校のスタイリスト科に通っていました。でも、スタイリストになりたかったわけではなく、卒業して販売職に就きました。
販売の仕事はとても忙しくて、空き時間もないし休日はエネルギーも残っていなかったのですが、
『何かやりたい』っていう気持ちがメラメラしていたので、自分の時間を持つためOLになりました。
17時で帰れたのは良かったのですが家賃が払えなくなってしまって、23の時はOLと飲食のバイトを掛け持ちしていた時期もありますね。
結局、忙しくなってしまって半泣きでした。その後、派遣OLに転職して、時給が1680円に上がりました。
その頃落書きのようなドローイングをしていて、絵を仕事にできたらいいなと思っていました。
漫画家になりたかったので、見よう見真似で書いて編集部に持ち込みもしていましたね。
でも、ダメダメで相手にもされなくて一度挫折しました。今でも憧れはあるんですけど無理だなって。
話を進行したり、背景を書いたり、色々なことが求められるスゴイお仕事だと思います。
そこで、自分の絵のタッチ的にイラストなら出来るかもしれないと思うようになりました。」
<貴重!駆け出しのときのイラストを公開>
「イラストを描いていたら、通っていた浅草の洋服屋さんで『個展をやってみたら?』と声を掛けてもらいました。
それまで何も表現していなかったけれど、ちょうどInstagramをはじめた時期で、絵は載せていました。
その洋服屋さんがきっかけで、ミュージシャンであり音楽プロデューサーであるアイゴン(會田茂一)さんが、
作品を見て『フライヤーを作ってほしい』と言ってくださったんです。」
少しずつお仕事が増えて、とんだ林さんを代表する表現スタイルが確立されるように。
「イラストを描くうちに、だんだんと他の手法もやりたくなっていました。
知り合いの美容室が移転することになって雑誌を全部処分するって聞いて。
それなら何かに使えるかもしれないから欲しいですとお願いして、引き取らせていただきました。
その雑誌を切り抜いてコラージュを始めました。」
―――― 休みの日は何をしていましたか?
「作品を作っていたと思います。TwitterとかInstagramに載せていました。」
―――― アーティストの仕事一本でやっていけるようになったのは?
「派遣OLはたしか29くらいまで続けていました。
辞めるときは、東京スカパラダイスオーケストラさんや木村カエラさんのグッズを手掛けさせていただいたりと、
少しずつお仕事がいただけるようになっていたと思います。フリーランスになって4年目になります。」
―――― 会社を辞めるときの気持ちは?
「辞める時は、勇気がいりました。でも、家がなくなってもいいって思えるくらい腹を括ったのでどうにかなっているのだと思います。
フリーは自由だし性に合っていますが、安泰はないです。ずっと作っていけるかは誰にも分からないなと思います。ずっとがむしゃらです。」
と、胸の内を語ってくれました!
<Daily routine>
―――― 日々のルーティンは?
「毎日、『サザエさん』のアニメを観ています。外で用事が終わったら『早く家に帰って観たいなぁ』って思っています。」
―――― 今もコラージュはされますか?
「します。最近は自分で撮影した写真、フリー素材、撮りおろしてもらった写真を使っています。」
―――― お仕事は家でしますか?
「そうですね。カフェとかでは仕事はできないタイプです」
また、意外な写真も披露。「皆さんにお伝えしたいのが、自分の過去のものは捨てない方が面白いということです。
私は昔ギャルだったのですが、黒歴史だと思って学生時代のノートとかも全部捨ててしまって。でも、年を取ると面白くてたまらない。
過去のものは絶対戻せないので、取っておいたほうがいいと思います!」と強調します。
―――― 最後に、「これは大事にしている」というポリシーはありますか?
「あんまり道を決めすぎないこと。理想があるのはいいと思いますが、レールを敷きすぎると、そこにおさまりすぎちゃう。
あとは、失敗するかもしれないけれど楽しそうだったらやってみることですね。」と、メッセージ。
ここでしか伺えない、パーソナルなお話もシェアしていただき、熱量やパーソナリティをよりリアルに感じられたのではないでしょうか。
とんだ林さん、ありがとうございました!
OFFICIAL WEBSITE: http://tondabayashiran.com/
Instagram:@tondabayashiran