『WE ARE LITTLE ZOMBIES』長久允監督講演会を開催!「映画でいちばん大切なこと」とは?【バンタンデザイン研究所】
『サンダンス映画祭』『ベルリン国際映画祭』『ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭』で
3冠を達成した作品『WE ARE LITTLE ZOMBIES』。
脚本・監督を務めたのが、バンタンデザイン研究所OBの長久允監督。
現在、ハリウッドで映画案件が進行中、2020年9月と2021年春には演劇の発表も予定されており、
映像業界で高く評価される注目のクリエイターです。
忙しい合間をぬって、母校である講演会にいらしてくださいました!
<▶ 学生時代、ダブルスクールをする>
「学生の時はジャズをやったり、Tシャツを作ったり、写真を撮ったり色々しました。でも、どれもパッとしなくて。
他の大学に通っていましたが、自分を追い込むために
バンタン映画映像学院映画監督コース(現:バンタンデザイン研究所映像学部)にダブルスクールしました。
バンタンの授業は、一回も休むことはありませんでしたね。
でも、心の中で講師の教えることは全部見下しているような反抗的な学生でした。
講師の誰よりも映画を愛して理解しているつもりで、全部理解することで、否定したかったんだと思います。
卒業制作も、脚本を書いて監督しました。
レンタルビデオショップなどで借りられると思うので、『FROG』という作品、よかったら観てみてください。」
<▶ 広告代理店に入社する>
「当時は『うまくいけば映画監督になれるな』と思っていましたが、在学中の映画監督デビューは叶わず、就職活動を始めました。
広告代理店に入社して、坊主頭で2年ほど営業をしていましたね。それからCMプランナーを12年ほどしていました。」
<▶ 広告の仕事で、映像筋肉が異様に鍛えられた!>
「アーティストPVや広告の仕事に10年以上携わったことで、映像の筋肉は異様についたと思います。
クライアントさんに、アングルや演出意図を細かく説明するのでビジュアルを言語化する力もつきました。
でも、お仕事として関わっている以上は『自己表現』ではありません。
自分が表現したいものを形にする、というよりも映像のプロとしてクライアントの発したいものを表現しているという感覚でした。」
<▶ ストレスにより、体調を崩す>
「4年以上前に倒れまして。耳の調子が悪かったり、一時期はコルセットをつけて歩いていたりしていて、お休みをいただくことになりました。
その時に、『作りたいものを思いきり作ろう』と思って撮ったのが『そうして私たちはプールに金魚を、』です。
『15才女子中学生4人 プールに金魚 キレイだなと思って』っていうネットニュース見出しを見たのがキッカケです。
彼女たちの気持ちが、こんな一行に凝縮されてたまるか!という使命感が湧いたんです。
気がつけば、十何年も好きなものを作っていなかったので、評価されたいとかではなく、ただ純粋にストレス発散で作りたかった。
自主制作映画なので、脚本を書くのも、いいなと思った役者さんに声をかけるのも、全部自分でやりました。
監督の仕事に決まりはありません。音楽もつくるし、デザインもする、音の1デシベルにもこだわるし、宣伝もやる。
どんどん越境したらいいと思います。」
<▶ サンダンス映画祭で短編部門グランプリを受賞する>
「制作当時は、日本で試写しても『面白い』という意見はそんなに聞こえてこなくて。
でも、半年くらいは色々な映画祭に出品しましたね。10人が退屈だと言っても、11人目が評価してくれるかもしれないと思っていました。
サンダンス映画祭で短編部門グランプリを受賞した時はビックリしました。
そこからです。映画監督としての道が開けたのは。
『WE ARE LITTLE ZOMBIES』は、資金集めをして作った長編映画です。7月中旬にはアメリカで公開が始まりました。」
<▶ 作品が、届くべき人に届いてほしい>
「あるカルト集団が、ローティーンをゲームで洗脳して自殺においこんでいくといった出来事があって。
『WE ARE LITTLE ZOMBIES』はそのニュースから着想しています。
僕自身もイジメられていたので、自殺したいほど悩むティーンネイジャーの方に、
『現実と対峙させずに逃げる方法』を伝えられないか?と考えていました。
『WE ARE LITTLE ZOMBIES』は、両親を事故や事件で亡くした子どもたちが冒険をしてバンドを組む物語です。
この作品が届くべき人に届いたらいいなと思っています。」
<▶ 映画のつくりかた。>
「僕の場合は……まず、
①伝えたいモチーフが降ってきます。
②次にシナリオを書きます。
③そしてシナリオを音読した音コンテを作ります。そこに音楽を貼り付けて肉付けします。
④絵コンテを全カット割ります。
⑤絵コンテに音コンテを貼って、手書きで絵のVコンテをつくります。
⑥ロケハンに行き、スマホでアングルを切ります。
⑦それを貼りつけて、ロケハン動画のビデコンを作り、最後にそれ通りに本番撮影をする。
という流れです。とにかく音が大事で、音には自信がありますね。」
<▶ 映画のルール。無視していい>
「映画の歴史は浅くて、100年くらいしかないんです。演出方法も色んなセオリーがあるけれど、どれも無視していいと思います。
エンタメ業界で評価されることを意図して、評価されるためのパッケージを作っても意味がないです。
自分が本当に好きなものを突き詰めることにこそ意味があります。
なので、スマホで撮影してスマホで編集してもいいと思います。
バンタンデザイン研究所の機材を借りて校舎で編集してもいい。好きなように作ればいいです。」
<映画でいちばん大事なことは……?>
「社会に対して何を伝えたいのかということです。
物語のためにある物語ではなくって、何のために物語があるのか?それを設定するまでは始めません。
一番大事なことは、この映画を何のために作っているのかという『使命感』。そこを見失わないことです。」
<学生たちからの質問>
Q.長久監督の反骨心はどうやって保たれるのですか?
「常識で縛ってくる人に対して、それは違うんじゃないか?って思ったら、伝えています。
社会は、ベルトコンベアのように都合のいい人を求めていると思います。
それが良ければそれはそれでいいけれど、僕は体調を壊した時にそれはやめようと思ったんです。」
Q.映画監督になりたいです。具体的に、どんなことから始めたらいいですか?
「とにかく自分の作品集を作ること。映像という形にしないと人には見えません。
YouTubeにあげるのもいいし、映画館の支配人に持ち込みするのもいいし、映画祭に出品してもいいと思います。
好きなものを作れと言いつつも、『表現したいもので、空いているゾーンは何か?』ということは常に意識しています。
既存のものをなぞるだけでは評価されにくいです。」
飾らず嘘のない言葉で、熱い想いを語ってくださった長久監督。
監督の人となりや信念を知ることで、作品から得られるメッセージもより豊かなものになるのではないでしょうか。
長久監督、ありがとうございました。
<映画『WE ARE LITTLE ZOMBIES』公開時のロングインタビュー記事はこちら>