様々なカメラの撮影技法を身につけていると、制作する映像の魅力が格段に上がり、ほかの作品との差別化を図れるようになります。
そこで今回の記事では、カメラワークについて解説します。
10種類の基本的な撮影技法の概要や効果、注意点はもちろん、撮影に役立つハイレベルなカメラワークテクニックを紹介します。
カメラワークとは
カメラワークとは、様々な撮影技法の総称です。
具体的には、映画やドラマ、CMなどの素となる写真や映像を撮影する際に使うカメラの操作方法・撮影技術・映像表現技術などを指します。
また、カメラマンの動きや活動を意味する言葉としても使われる用語です。
的確で効果的なカメラワークは、視聴者に作品のメッセージ(魅力・迫力・感動)を伝えるために重要な役割を担っているといっても過言ではありません。
カメラワークの基礎となる要素としては、
撮影する被写体に対する「ポジション(位置)」「アングル(角度)」「フレーム(被写体のサイズ)」の3種類が挙げられます。
カメラワークの基本解説
フィックス
フィックスとは、カメラを動かさない状態で撮影する方法であり、固定撮影ともいわれる基本的なカメラワークです。
ここからは、フィックスによる撮影効果や、その技術を活かす最適な場面、撮影時の注意点を解説します。
フィックスによる効果
カメラを固定して撮影するフィックスは、画面に安定感をもたらします。
手持ちのカメラで撮影した被写体と比較した場合、フィックスで撮影した被写体のほうが見やすいため、
視聴者の視線を集中させられるうえ、長時間の視聴も疲れません。
また、被写体の繊細な表情や動作などを捉えることが可能です。
フィックスを使う際の注意点
映像が不安定にならないよう不要なブレを防止するため、三脚を使用し安定した映像を撮影しましょう。
三脚がない場合、壁や家具、足場などを上手く利用するとよいでしょう。
ティルト
ティルトとは、カメラを上下に振る基本的な撮影方法です。
カメラのアングル(角度)を垂直に変えるものであり、カメラマンは動かず、カメラだけを動かします。
ティルトによる効果
カメラを垂直方向に移動させるティルトは、シンプルなカメラワークながらも、
その動きだけで物語の始まりや終わり、場面展開、被写体の心理描写などを描くことができます。
例えば、ゆっくりと目線(アングル)が下から上に向き、
青空を見上げる演出や、沈む気持ちを表現するように、上から下へと目線を落とすといった具合です。
ティルトを使う際の注意点
ティルトを用いるときの注意点は、撮影速度を一定に保つことです。
カメラを急に素早く上げたり、無意味に下げたりすると、ティルトの目的を失いかねません。
動画は編集できるため、ティルトでの撮影時は1カットを長く撮りましょう。
パン
パン(パンニング)とは、カメラを左右に振る撮影方法です。カメラのアングル(角度)を水平に移動させるものであり、
左から右をパン、右から左を逆パンと呼びます。
ここからは、パンによる撮影効果、技術を活かす最適な場面、撮影時の注意点を見ていきましょう。
パンによる効果
シンプルな水平移動のパンは、被写体の広さや横幅のディティール、
位置関係や視線の横移動を表現するときに大きな効果を発揮するカメラワークです。
また、時間の流れを演出する場合や、スピード感ある場面の切り替え、
画面上の情報量を増やしたいときも、パンによる撮影が用いられます。
パンを使う際の注意点
パンでの撮影時、撮り始めと撮り終わりの速度に注意を払うようにしてください。
撮影時のコツとして、始動と停止は「ゆっくり」と、
その途中は「早め」にカメラを動かせば、視聴者にとって見やすい映像が作れます。
ズームイン・ズームアウト
カメラの画角を変え、被写体に近づいたり、離れたりする撮影方法がズームです。
ここからは、汎用性の高いカメラワークであるズームイン・ズームアウトによる撮影効果、
技術を活かす最適な場面、撮影時の注意点を解説します。
ズームイン・ズームアウトによる効果
特定の被写体を強調する際や、視点を誘導・集中させる際に、ズームインが効果を発揮します。
また、特定の被写体が置かれている状況や周囲との関係性を見せたいとき、
または、視点を開放させたいときなどは、ズームアウトが効果的です。
ズームイン・ズームアウトを使う際の注意点
無意味なズームは、視聴者の混乱を招く可能性があるため、ズームイン・ズームアウトを使う際は、
その必要性を重視しなくてはなりません。
また、撮影技術の観点からも、不要な写り込みや画面上の情報量のバランスなどに十分な注意が必要です。
トラック
トラックとは、被写体の動きとともにカメラの設置場所を変える撮影方法であり、
移動撮影とも呼ばれるカメラワークです。
ここからは、トラックによる撮影効果、技術を活かす最適な場面、撮影時の注意点を見ていきましょう。
トラックによる効果
カメラと被写体の距離を調整できるトラックは、映像に臨場感や迫力をもたらします。
視点も自由に移動できるため、物語を自然に表現できたり
、場面の情報量を増やしたり、分かりやすい画を作るなどの効果もトラックの魅力です。
また、画角に流れる街並みや歩行者などの前景・背景を入れることで、画面上の流動感をダイナミックに強調することが可能です。
トラックを使う際の注意点
トラックでの撮影時、カメラと被写体の距離感に注意が必要です。
双方の距離が遠すぎた場合は、視点が登場人物(被写体)ではない第三者目線のようになってしまい、
視聴者にとって違和感のある映像になってしまいます。あくまでも自然な位置関係を保ちながら撮影をおこなってください。
ドリー・イン/ドリー・アウト
トラックと同様、ドリーも移動撮影の技法になります。車輪の付いた三脚・台車・車両などにカメラを乗せて撮影する点が、ドリーの大きな特徴です。
ここからは、ドリーによる撮影効果、技術を活かす最適な場面、撮影時の注意点を解説します。
ドリー・イン/ドリー・アウトによる効果
ドリー・インとは、カメラが被写体に近づく(前進する)撮影方法です。
一方、ドリー・アウトとは、カメラが被写体から離れる(後退する)撮影方法です。
安定した速度のある水平移動の撮影により、トラックよりも映像に流動感や臨場感、迫力を加えることができます。
また、被写体と背景サイズの調整、遠近感と立体感の強調、被写体と周囲の位置関係や状況の説明などにも効果的です。
ドリー・イン/ドリー・アウトを使う際の注意点
ドリーによる撮影中は、カメラの位置を移動させるため、足場の安定感が重要です。
手ブレや足場に細心の注意を払い、できるだけフラットな道を確保し、車輪付きの三脚・台車・車両を乗せられる導線を準備するとよいでしょう。
アーク
カメラが被写体を周回しながら撮影する方法がアークです。アークによる撮影時、基本的に被写体は動きません。
アークによる効果
静止した被写体を中心に、回り込みながら撮影するアークは、視聴者の目線を被写体に集中させることができます。
そのため、主にフォーカスしたい人物や動物、アイテムなどを撮影する際に用いられるカメラワークです。
また、周回するスピードを調整することによって、映像の表現を変えられることもアークによる撮影の魅力といえるでしょう。
アークを使う際の注意点
撮影時にカメラを持った状態で被写体を周回するアークは、手ブレや足場の状態に細心の注意を払う必要があります。
また、レンズの焦点距離が長いほど、被写体に対するピントをキープすることが難しくなるため、状況に応じたレンズのサイズを選びましょう。
ペデスタル
ペデスタルは、カメラの設置場所を上下に変える撮影方法です。
ここからは、ペデスタルによる撮影効果、技術を活かす最適な場面、撮影時の注意点を見ていきましょう。
ペデスタルによる効果
ペデスタルとは、車輪が付いた三角形の台座を指しています。
台座の中央には、空気圧で伸縮する円筒があり、その上にカメラを固定するため、スムーズにカメラの高さを上下へ移動させることができます。
ペデスタルを使えば、カメラをゆっくりと上げていくことで、最初は障害物で見えなかった風景の全体像を徐々に把握できるなどの効果を演出できるようになります。
ペデスタルを使う際の注意点
撮影スペースや用途にあわせ、ペデスタルのサイズを選ぶ必要があります。
小型~中柄レンズに対応できる三脚タイプや移動式台座から、大型レンズを装着できるタイプまで、
その機能を十分活かせるペデスタルをチョイスしましょう。
ラックフォーカス
ピントの位置を変えながら撮影する方法がラックフォーカスです。
ここからは「フォーカス送り」や「ピン送り」とも呼ばれるラックフォーカスの撮影効果、技術を活かす最適な場面、撮影時の注意点を解説します。
ラックフォーカスによる効果
ラックフォーカスによる撮影では、手前にある被写体から奥の被写体、また、その逆の場合であっても、意図的にピントを合わせることが可能です。
例えば、焦点がボケているアウトフォーカスの状態から被写体にピントをあわせれば、カメラを移動させることなく動きを表現できる効果が得られます。
ラックフォーカスを使う際の注意点
ラックフォーカスによる撮影時には、ピントを外さないように注意しましょう。
レンズは手動でピントを合わせるマニュアルフォーカスに設定し、一定の速度でピント位置を変えるようにしてください。
ハンドヘルド
ハンドヘルドとは、手持ち状態のカメラで撮影する方法で、どんな被写体でも捉えることが可能なカメラワークです。
ハンドヘルドによる効果
カメラを固定せず手持ちで撮影するハンドヘルドは、小回りが利くため、被写体のどのような動きにも対応できます。
カメラの動きが不安定なことから、画面が揺れたり、構図が斜めになる場合もありますが、
映像に臨場感や躍動感、スピード感をもたらすカメラワークです。また、緊迫感や迫力が増し、視聴者にリアリティを感じさせる効果があります。
ハンドヘルドを使う際の注意点
ハンドヘルドでの撮影をおこなう場合、臨場感や躍動感を表現できる半面、わざとらしい過剰な演出となってしまい、
視聴者に違和感や不快感を与えてしまいます。撮影中は、自然な手ブレを意識し、リアリティあるカメラワークを心がけることが重要です。
ハイレベルなカメラワークテックニック
カメラを複数使用する
ひとつの動画を制作する際、通常であれば1台のカメラで1カットずつ撮影するケースが大半です。しかし、複数のカメラを同時に使用すれば、単体では捉えきれなかった動作や表情などを様々な角度から撮影できるため、メリハリのある映像を作り出すことができます。
また1台のカメラが撮影に失敗しても、別アングルの映像があれば、違和感のない編集ができることから、撮り直しの必要もありません。
さらに、カットごとの別撮りも少なくなり、制作時間の短縮にもつながります。
この利便性から、YouTuberなどに投稿されるSNS動画においても、複数のカメラを使って撮影することが増えているようです。
複数のカメラで撮影する場合、編集作業を意識しながらカメラの画を同期させるようにしてください。カチンコやフラッシュ、手を叩くといった方法で合図を送るとよいでしょう。
ブレを生かす
基本的に、撮影において好ましくないとされるブレを、演出として映像に取り入れるハイレベルなカメラワークも存在します。その代表的な撮影技法が手ブレを活かしたハンドヘルドです。映画やドラマ、バラエティ番組などで、躍動感や臨場感、緊迫感などを演出する際に、自然なブレがリアリティを生み出し、視聴者の感情移入を高めてくれます。ブレを生かす場合、視聴者に不快感を与えない程度の塩梅がテクニックの見せどころです。
構図にこだわる
映像の構図にこだわることも、ハイレベルなカメラワークテクニックに挙げられます。構図は、映像表現の演出に欠かせない撮影技術の基本です。
構図とは、被写体が各所に配置された画面の構成を意味します。監督や脚本の指示に従い、その考えや狙いを読み取り、シーンごとに画面の構図を変えていかなければなりません。
カメラワークに使われる構図には、数多くの撮影技法があります。画面を縦横三分割に別け、被写体を配置する「三分割構図」や、被写体を中央に大きく置いた「日の丸構図」が代表的なテクニックです。
また、左右・上下対称に被写体を置く「シンメトリー構図」や、画の対角線上に被写体を配置する「対角線構図」もよく使われる構図になります。
本格的なカメラワークを習得したいなら専門学校がおすすめ
カメラワークには、数多くの撮影技法が存在します。映画やドラマ、CMなど、制作するコンテンツの内容をはじめ、撮影現場や撮影場面、監督やディレクターの指示や意向などを読み取り、その状況に最適なカメラワークを駆使しなければなりません。このようなスキルを効率的に身につけたいならば、専門学校をおすすめします。映像・写真・デザインなどに特化した専門学校では、個人のレベルにあわせて、必要な基礎技術や高度な知識を学ぶことが可能です。
より専門的にカメラワークを学びたい人はこのコースがおすすめ
専門的なカメラワークを学びたい場合は、バンタンデザイン研究所の以下のコースがおすすめです。
どのようなカメラワークを習得したいのか、自分のなりたいカメラマン像を考慮し、最適なコースを選ぶとよいでしょう。
・WSフォトグラフィ専攻【2年制週3日】(東京校のみ)
https://www.vantan.com/faculty/design/de-07/index.php
・WSフォトグラフィコース【1年制週3日】(大阪校のみ)
https://www.vantan.com/faculty/design/de-09/index.php
・映像クリエイター実践【4年制】
https://www.vantan.com/faculty/design/mv-12/index.php
・映像クリエイター総合【3年制】
https://www.vantan.com/faculty/design/mv-11/index.php
・WS映像クリエイター専攻【2年制週3日】
https://www.vantan.com/faculty/design/mv-10/index.php
・WS映像クリエイターコース【1年制週3日】
https://www.vantan.com/faculty/design/mv-05/index.php