WSヘアメイク基礎科が年度末制作で、インスタレーションショーを実施。「花鳥風月」をテーマにコレクションを発表!【バンタンデザイン研究所】
WSヘアメイク基礎科(1年)生が「インスタレーションショー」を行いました。インスタレーションショーとは、
作品だけでなく、空間や建築物を含めて総合的に作品を見せる表現手法のこと。
ショーは録画され、イメージ映像や、サウンドを組み合わせることで、インスタレーションへと昇華させます。
じっとモニターを見つめ、学生たちに指示を出しているのがディレクター山口さんです。
「コロナ禍ですが、苦しい時代を乗り越えよう、自分たちの進みたい道を歩もうという決意を込めて、テーマは『花鳥風月』にしました。
自然と人間が寄り添い合いながら、共に生きていこうという意味合いを込めています」
ショーは、花、鳥、風、月の4部構成からなり、それぞれのカテゴリーにはキーワードが定められています。花は、物語の始まりを意味する「揺籃(ようらん)」、
鳥は「変質」、風は「無垢」、月は「神秘」。学生たちは、どのようにテーマを解釈したのでしょうか?
<花「揺籃」>
田中さん「テーマは、『砂漠のバラ』です。砂漠のバラにはふたつの意味があることを知っていますか?ひとつは、文字通りの花で、アデニウム。
もうひとつは、砂漠で石膏などが固まった『鉱石』を指します。花と鉱石、ダブルミーニングを持つ作品を作りました」と田中さん。
マットな肌をベースに、アデニウムの赤をアイホールからアイブロウまでのせ、グロスでツヤ感をプラス。ヘアは植物を彷彿とさせる生命力のある造形に。
衣装は、大地のカラーをベースにし、芽生えたばかりの植物をイメージしています。肌も露出させることで、ナチュラルだけれど力強い印象に。
こちらは、「幽霊の花嫁」がテーマの小沢さん、吉田さん。
吉田さんは「アイシャドウは黒をオーバー気味に入れ、ダークな雰囲気にしました」
ヘアについては「メイクが黒なので、ヘアもクールにすると格好よくなりすぎてしまいます。なので、ヘアはボリューム感のある、ふわふわとしたスタイルにしました」
衣装は、微調整が必要だったと話します。「マネキンで衣装を作っていたから、実際にモデルさんに着せて驚きました。
前もって聞いていたサイズよりも痩せていたので、綺麗なラインを出すためには衣装を変更しなくてはならなかったんです」。調整した甲斐あって
、幽霊のようなダークなメイクと、純白のウエディングのコントラストが印象的な作品に。
<鳥「変質」>
田荷さんは「孵化(ふか)」をテーマに作品を制作。「成鳥をテーマにする人が多かったので、生まれたばかりのひな鳥をモチーフにしました。
メイクは、コンシーラーで肌の赤みを隠し、まぶたには顔用グロスを塗りました。眉はのりで固め、生まれたばかりのツヤ感を表現しています」
透明ラップと、半紙を使い、まるで卵を割って出てきたかのような生々しい質感を表現。「動画の撮影では、全身のバランスを考えることが大切だと分かりました。
スチール撮影とは、光りの加減も、顔の見え方も違うので、その辺りはとても勉強になります」と話します。
「陰と陽」をテーマにした大塚さん、若森さん。「鳥が羽を広げると影ができます。
影は、本来、主役ではありませんが、光もあれば影もあることを表現したかった」とコンセプトを語ります。口を覆う羽のマスクに、明るい陽をラメで表し、
徐々にグレーから漆黒のグラデーションが広がり、影へと移ろいゆく様子を描きました。
大塚さんは「撮影を通して、頭の中で思い描いているイメージを、そのまま作ることがいかに難しいかを痛感。ふたりで作ったので、イメージの共有も必須です。
インスタレーションでは、全方位がカメラに映るので、どの角度から見ても完璧な仕上がりにしないといけません」と話します。
他に、ヒンドゥー教にまつわる鳥「ガルーダ」をイメージした作品も。戦闘服をイメージした衣装に、口ばしのオブジェをつけて荘厳な雰囲気に。
<風「無垢」>
北川さん、竹口さんのテーマは「優しい雨風」。レインコートに、オーガンジーを重ねたエアリーな衣装をまとい、腕や顔にはラインストーンを散りばめました。
竹口さん「ヘアは、ふんわりと巻いて柔らかさにこだわりました。前髪はシールスーバングで風の流れを感じられるように。
イクはアイホールに青を入れてグロスを重ね、潤った質感にしています」
「抽象的なもの、形のないものを形にするのは難しかったです」と北川さんは話します。
「無垢」をテーマに設定した山田さん、松野さんチーム。
松野さんは「目元にグロスをつけて無垢な純粋さを表現しています。フェイスペイントは風の流れやうねりを描いています」
ヘア担当・山田さんは「当初、髪型はハーフアップを予定していましたがリハーサルで映像を見たときに違和感がありました。
なので、思い切ってタイトなアップスタイルに。バームでウエット感を出しつつ、うぶ毛を残して純真無垢な雰囲気に。モデルさんは外人なので、
ヘアは30分前に仕上げないと髪がヨレてきてしまいます。なので、撮影の直前に仕込むことがポイントです」とこだわりを明かします。個人制作に加えて、
インスタレーションの演出係も務めているふたり。「自分たちの作品を仕上げながら、ショー全体の演出を考えるのがとても大変でした。絵コンテを書いて、
カメラマンさんとも2回打ち合わせをし、ようやく形になりました。
ライトの当て方次第で、作品の見え方がガラリと変わることが肌感覚で分かったのは、とても良かったです」と松野さん。
風チームは、機械を使い、物理的な風を起こす演出も。「強い風ではなく、ふんわりした柔らかい風を作って」と意見するのは、メイク監修・タカハシ チエコ講師。
講師のアドバイスを反映し、細部まで見せ方にもこだわっていきます。
<月「神秘」>
リュウ・ムニさんのテーマは「月に住んでいる宇宙人」。「他の学生とは違うものを作りたいと思いました。月に住んでいる宇宙人バレリーナのようなイメージです」。
おでこには、目をペイントして、人間離れした雰囲気に。ウサギの耳をイメージしたヘアにはストーンをあしらい華やかさもプラス。
「クレオパトラ」をテーマにした鳥居塚さん。アイメイクには錆びのようなカラーをのせ、結束バンドで作ったヘッドピースで神々しさを演出。
衣装はタイトなブラックドレスに、ゴールドに着色した装飾をあしらいデコラティブにまとめました。「特に力を入れたのはヘア。髪の毛を小さな束にし、
アルミホイルを巻き付けてストレートアイロンで熱を加えると、ふんわりしたボリューミーなヘアになります。
授業で習った『編み込み』も、冠のように作れたので技術を応用できたと思います」と満足そう。
モデルをヒキで撮影した後、一体ずつ、モデルのディテールを上から撮る……という流れを掴んでからは、シューティングはスムーズに進んでいきました。
撮影を終えて、ディレクター山口さんは「一か月前から急ピッチで仕上げていきました。時間内に完成するのか?という不安もあり、とてもキツかったですね。
その分、インスタレーションにかける想いは人一倍強いです。スケジュール管理の大切さや、ショーの見せ方を学ぶことができました。
なかなかできない経験なので、達成感も大きいです」と手応えを感じていました。
タカハシ講師も「コロナ禍で制限も多い中で、よく頑張ったと思います。インスタレーションとう手法も初めてなのに、それぞれが独自の世界観を作り上げました。
特に、風と月は評価に値します」とフィードバック。
個人で完成度を高めるだけでなく、ショーとして全体のクオリティも追及すること。年度末制作展を通して、学生たちは実践的なスキルを身に着けた様子。
この勢いを2年次も止めることなく、スキルをアップデートしていってくださいね。
WSヘアメイク基礎科の1年間の集大成、ぜひご覧ください。