<卒業生インタビュー>「SAUCE WORLD」デザイナー/「D.Nart.Ampta」グラフィックアーティスト。ファッション学部ファッションプロデュース専攻 2年制 村上 勝也さん【バンタンデザイン研究所】
卒業生インタビュー!!
「SAUCE WORLD」デザイナー
「D.Nart.Ampta」グラフィックアーティスト 村上 勝也さん
バンタンデザイン研究所では、業界で活躍するプロフェッショナルを数多く輩出しています。今回は、2022 年 3 ⽉ファッション学部ファッションプロデュース専攻 2 年制を卒業し、「SAUCE WORLD」(@sauceworld.jp)デザイナー/「D.Nart.Ampta」(@d.nart.ampta)ファーストコレクショングラフィックアーティスト/グラフィックデザイナー(@iroha_oresanjou)としてご活躍する、村上勝也さんのインタビューをお届けします。
――― 運営ブランド「SAUCE WORLD」について教えてください。
2020 年8 ⽉に、中川講師の授業でスタートしたブランドです。在校⽣(※以下、メンバーと呼びます)全員が、⼀⼈ひとつブランドをたちあげるプロジェクトです。コレクションラインではありませんが、定期的に新作を出していて、昨年からは「ブラック アニー 湘南藤沢オーパ店」さんでのお取り扱いも決まっています。
僕は、バンタンデザイン研究所に入ると同時にからグラフィックを独学で学んでいたので、その技術を活かしています。在学時、1年次は全員が共通の授業を受け、2 年次から⾃分のブランドを展開するポップアップコース、他に、バイヤーコース、プレス・バイヤーコースと専⾨が分かれていきました。
――― ありがとうございます。SAUCE WORLD のお取り扱い店舗様について教えてください。
ブラック アニー 湘南藤沢オーパ店さんは、創業1993 年の⽼舗セレクトショップです。
2022 年6 ⽉に、お取り扱いが始まりました。10 年以上続いているショップさんに置かせてもらえるなんて、光栄なことです。湘南のお店なので、その⼟地をイメージしたグラフィックを描き特別アイテムをつくりました。
――― どのような経緯で実現したのですか?
同じバンタンの先輩がストリートブランドをやっていて、ブラック アニーさんと仲が良く、ポップアップストアをしていました。遊びに⾏ったら、若⼿ストリートブランドを応援したい」とうかがって。⾃分のブランドをプレゼンしたら、「めっちゃいい」と⾔っていただき、ポップアップをやらせていただきました。ブラック アニーさんでしか服を買わないお客様もいらっしゃるほど、⼈気のショップなので嬉しかったです。遊びに⾏った先で話が繋がることは多いですね。
歴が浅いので、⾃信がないなりにも⾃分を奮い⽴たせて⾏動している側⾯もあります。
――― ご⼊学当時から、アパレルブランドを⽴ち上げようと思っていたのですか?
それが、まったく思っていませんでした。気持ちは、0%です。アパレル企業に就職希望で⼊学して、⾃⼰分析でも、リーダーの補佐的な⽴ち場が向いているのではないかと思っていました。ぶっちゃけた話をすると、最初は仕⽅なくやっていましたが、中川講師に「服作りの⾯⽩さ」を教えていただきました。
――― 「Adobe Illustrator」を始めたキッカケは?
イラストレーターを学び始めたキッカケは、バンタンデザイン研究所のホームページの、ファッションプロデュース専攻の授業内容で「在学時に使う」と記載があったから。⼊学前に予習しておこうと思って、イラストレーターを独学で学び始めました。
――― そうだったんですね。⼊学された経緯について教えてください。
⾼校卒業後就職し、2 年ほど働いていました。いわゆるブラック企業で働いていたので、⼤変でしたが、なんとか続けられていて。そのときに、「どうせ忙しく働くのであれば、好きな業界がいい」と思いました。アパレル業界は未経験でしたし⾃信もなかったので、ファッション専⾨校を調べました。あるサイトで、バンタンデザイン研究所がアパレル業界に強いスクール上位に⼊っていて決めました。座学の勉強が好きではないので、⼊学試験が無いことも、魅⼒に感じました。
―――― 初めて、ブランドをプロデュースしたときの思い出は?
ファッションの知識があった、という訳ではないので、作るのであればコストを抑えつつ、⾃分の得意な分野を活かせる形がいいと思いました。Tシャツなどシンプルなボディに、イラストレーターでプリントしたワッペンをあしらいました。もう⼀つ、クラスメイトに負けるのはイヤでした。週5 ⽇学ぶコースだったので、同級⽣は、⾼校⽣が多かったです。⾃分は、めちゃくちゃ負けず嫌いな性格で、⼝にこそ出しませんでしたが、スクールでいちばん優秀じゃなければ、希望する企業には就職できないだろうと思っていました。仕⽅なく始めたブランドでしたが、進めるうちに、「絶対に負けたくない」という競争⼼も⽣まれました。
――― 「SAUCE WORLD」が正式にスタートしたのは、1年次でしょうか?
そうですね。2020年4⽉に⼊学し、同年10⽉には現役プロフェッショナルの講師陣への審査がありました。なので2020年10⽉です。審査を通過したブランドのみ、渋⾕PARCOでポップアップストアを出すことができました。
――― 渋⾕PARCO でのポップアップストアの思い出は。
初めてのことが多すぎて。最初は、コストをかけたくないと思っていましたが、いざ始めたら揃えるべきものが分からず、けっこうなお⾦をかけてしまいましたね。また、横浜出⾝なのですが、出店するときに初めて渋⾕PARCO を訪れたくらいです。
――― どのようなデザインを提案しましたか?
20 代から30 代が経験している、有名なゲーム機器をイラストレーターで描いて、ワッペンにしました。そのときは、ブランド独⾃のスタイルを軸にするというよりも、成績優秀を狙ったプロダクトでした。渋⾕PARCO への出店をかけたプレゼンテーションに、ファッション&カルチャーメディア「QUI」編集者さんが審査に来ていたので、“当てに”いきました。分かりやすさや、ターゲットとなる⺟数の多さから提案しました。
――― 渋⾕PARCO での売り上げは?
3⽇間で4万円を売り上げました。また、審査の際に、プレゼンテーションの評価がつけられるのですが、そこで「QUI 賞」として10万円を獲得できたことも嬉しかったです。上
位に⼊ることができ、資⾦も得られたので、トータルでは⿊字となりました。2年次は、早々にラフォーレ原宿へのポップアップストア出店がありました。2年次になり、ようやく「就職するよりも、⾃分のブランドを続けていきたい」という気持ちが強くなりました。プレゼンでの審査結果にもこだわっていき、ここでも出店店舗にハマりつつ、「SAUCE WORLD」らしさも出すように変化していきました。
――― 2年次で、就職希望から「ブランド運営」に進路変更することになったキッカケは?
早々に中川講師との⾯談がありました。「服をつくるのは楽しいよ」と背中を押してもら
え、腹をくくりました。
――― ⾏動は、どのように変わりましたか。
まず、⼈脈を広げようと思いました。バンタンデザイン研究所だけでなく、⽂化服装学院の⽣徒や、ファッションが好きな⼈たちが集まるイベントに出かけるようにしました。そこで、「⾃分はグラフィックデザインをやっているんだ」とアピールし、知ってもらえるようにしました。また、⾃分でもクラスの友だちや、アパレルブランドをしている⼈に声をかけてイベントをオーガナイズし、⼈脈を広げることをめちゃくちゃ意識しました。
――― 振り返ってみて、そのことはどのように良かったですか?
服をつくれる⼈はいても、意外とグラフィックデザインができる⼈がいなくて。「グラフィックデザインといえば、村上勝也」という地位を、同世代に刷り込むことができ、友だちや友だちの紹介で仕事を依頼されることが増えていきました。最初は、無料とか、5000円といった具合ですが、そうした仕事を地道にやっていきました。今思えば、クライアントワークに慣れるという意味でも良かったです。
――― 「D.Nart.Ampta」に携わるキッカケを教えてください。
2021年12⽉頃、あるファッションブランドでインターンをしていた先輩が、デザイナーの⼤縫さんを紹介してくれました。⼤縫さんに、もともと作っていたアート作品を⾒せると、好みに刺さったようで⾃然と仲良くなりました。
――― 「SAUCE WORLD」と、「D.Nart.Ampta」の違いは?
明確にすみ分けています。「SAUCE WORLD」は、⾃分だけのクリエイティブです。クライアントワークでは表現できないクリエイションを、グラフィックでガンと出すイメージです。⾃分の「こういうものが格好いい」という基準に従って、デザインをしています。対して、「D.Nart.Ampta」は、クライアントワークの思考で取り組んでいます。テキスタイルの提案、ポスターやインビテーション(招待状)のグラフィックを担当しました。デザイン画をみて、テーマを決めてからグラフィックを描き、相談してデザイナーと⼀緒につくりあげていくイメージです。洋服のデザインには、タッチしていません。
――― 「D.Nart.Ampta」で印象に残っているWORKSは?
テキスタイルへのグラフィック提供が、嬉しかったです。僕は、補佐的な⽴場が得意なので、「SAUCE WORLD」も楽しいですが、グラフィックに専念できたらいいし、2 ⼈体制での運営がずっと理想でした。例えば、総柄のジャケットなど、⾃分にはできないクリエイションが「D.Nart.Ampta」で叶えられました。⾃分のやりたいクリエイティブを提供でき、⼀緒にものづくりができることに価値を感じます。また、ショーに来てくれた⼈にも、「僕の⾊が出ている」と⾔ってもらえ、⼿応えを感じました。
――― 「ANREALAGE」とのコラボレーションが実現した経緯は?
「D.Nart.Ampta」ショーの際に、様々な東コレブランドをディレクションされている⼈が、お⼿伝いにいらっしゃっていました。僕の仕事は、テキスタイルへのグラフィック提供や、インビテーションの準備などがメインなので、ショー当⽇は⼿が空いていたんです。そこで、スタッフさんがあまりやりたがらないライトの演出を担当しました。ライトのオン・オフの指⽰出しをされていたのが、その⼈でした。お仕事をしてく中で、気に⼊ってくださったんです。仲良くさせていただいていると、あるときに「⼤きい案件があるかも」と打診されました。僕としては、何がご⼀緒できたら嬉しいと思っていたので、「ANREALAGE」と聞いてとても驚きました。
――― なるほど。バンタンデザイン研究所で学んだメリットについて教えてください。
タイミングなど、すべてが良かったです。周りのメンバーもバイブスが⾼く、めちゃくちゃ負けず嫌い。なので、プレゼンテーションで⼿を抜いたら負けるという緊張感もありました。また、同期は早い段階から「ブランド⼀本でやっていく」と本気でした。もしも、⾃分がプレゼンで⼊賞してなかったらアパレル企業に就職していたと思いますし、仮に⾃分だけレベルが突出していても⾯⽩くないな、と思って就職を選んでいたかもしれません。そもそも、バンタンデザイン研究所に⼊っていなかったら、グラフィックデザインも習得していなかったと思います。Adobe Illustrator を使うなら予習しておこうと思ったのが、今の仕事につながっているので……。
また、フリーランスとして腹をくくれたのも中川講師のおかげ。不安なことがあれば、いつでも相談に乗ってくれますし、つくるものも考え⽅もリスペクトしています。すべてが、バンタンデザイン研究所に⼊ったからこそ得られたものです。
――― 中川講師以外で、印象に残っている講師は?
グラフィックアーティスト相原 ⼀博講師です。1 年間だけ学んだのですが、その講師にも⼈⽣相談をしていました。「グラフィックアーティスト」としてご活躍されていて、グラフィックを「アートとして」表現するクリエイターにも出会うことができました。個展をされるときは必ず伺い、近況報告するようにしています。お会いすると、「この映画を観ておけよ」とアドバイスしてくれることもあります。⾃分にとって、中川講師と相原講師は、⽣きざまから全てが格好いい。お⼆⼈には⼈⽣を変えられたなと思っていて、⼼から感謝しています。
――― 今後の⽬標について教えてください。
「SAUCE WORLD」は、ストリートブランドを代表し、「みんなが着るよね」という存在を⽬指しています。
同時に、僕にしかできない表現技法を磨いていきます。仕事で作ったデザインやファッションショーを⾒た⼈に「村上くんの色が出てて良い」と⾔われるようなインパクトのあるデザインを、ずっと描けないと置いていかれてしまいます。なので、ブランドと共にグラフィッカーとして成⻑していきます。
――― ありがとうございます。最後に、これからバンタンデザイン研究所へ⼊学する⼈、検討している⼈へ向けてメッセージをお願いします。
「好き」なことを⾒つけて、極めてくれたらいいなと思います。
今、体験授業も担当していますが、⾃分の好きなことが漠然としている⼈が多い印象です。
好きなファッションブランドを聞いても、答えられない⼈がほとんど。⼊学前はそれでも良いかもしれませんが、在学中も曖昧なまま、「ふわっと」した状態で過ごすと、あっという間に2 年間が過ぎてしまいます。それは、勿体ないと思います。⾃分に置き換えてみると、グラフィックが⼼から好きと思っているからこそ、仕事にできています。⾃分が仕事にしたい「好き」を⾒極めて、研究してください。僕も、最初は「ふわっと」していました。好きを⾒つけて極められると、例えばアルバイト先も飲⾷店から、好きなブランドのショップなどに変わると思いますし、やりたいことにも繋がってきます。
シンプルですけれど、⼤事なことです。
https://sauceworld.stores.jp
https://dnartampta.official.ec
<EVENT INFORMATION>
2023. 3/21〜3/23
@恵⽐寿・パークサイドギャラリー ※時間未定
「SAUCE WORLD 」、「LITTLEMAINANA 」、「TEPPEI FURUYAMA 」、「Marche
Fleur 」、「YOTANAKATSU」、「NKGW」(順不同)による合同展⽰会を予定。