22.12.15
23.03.22 更新
<産学協同プロジェクト>株式会社アダストリアとの『メタバースクリエイター育成プロジェクト』が始動。アダストリア本部にて行われた特別セミナーをレポート【バンタンデザイン研究所】
授業/特別講師/講演会
東京校
<産学協同プロジェクト>
株式会社アダストリアとの
『メタバースクリエイター育成プロジェクト』が始動‼
急成長中のメタバース市場。
「メタバースの世界市場は2021年に4兆2,640億円だったものが、2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予想されている」(総務省「令和4年版 情報通信白書」)と発表されるほど、注目度の高いマーケットです。
バンタンデザイン研究所では、「メタバース領域で活躍するクリエイターの育成」にフォーカスした産学協同プロジェクトを始動します。11月6日、渋谷ヒカリエ・アダストリア本部にてワークショップ&セミナーを実施しました。
前半は、株式会社アダストリア メタバースプロジェクトマネージャー 島田淳史様によるセミナーを開催。後半は、世界で3億4000万人ユーザー(2022年10月時点)が利用するメタバースプラットフォーム「ZEPETO」を運営するNAVER Z Japan株式会社 JAPAN Business Lead 加嶋雄一様、株式会社アダストリア 生産部パターンチーム 高橋拓海様、バンタンデザイン研究所 マネージャー野尻貴将氏を迎えてディスカッションを行いました。
セミナー開始前に「この中で、メタバースをやっている人は?」と問いかける島田様。
手が挙がったのは、10数名のうち2名。
「今、皆さんがInstagramで日常を発信しているように、3~5年後には当たり前に使うツールになると思っています。皆さんが今、学ばれていることは全てメタバースで可能性が広がります。私も今年の4月から本プロジェクトを立ち上げたばかりです。半年間で学んだことをシェアします」
1. メタバースで重要なのは「アバター」と「ワールド」
「メタバースとは何か。個人的には『自分のアイデンティで自分ではない。自分を反映した何かになり容姿、言語、性別、場所に限られず日常の延長線にあるもの』と、とらえています。重要となる要素はふたつで、アバターとワールドです。
アバターとは、メタバース空間上で操作する自分の分身です。人間、亜人、ロボットなど自分の好みに合わせて選択し、自分の好みや洋服、身に着けるものを楽しむことができます。例えば、ECサイト『.st』のオリジナルアバター枡花 蒼ちゃんは、『RAGEBLUE』の商品を着用しています。
ワールドとは、空間、世界、場所、建物などユーザーたちが来訪し、思い思いに楽しむ空間のこと。既に、バーチャルな駅や、アパレルショップ、お化け屋敷、ナイトプールなども存在しています」
2. クリエイティブの可能性を広げる
「皆さんは、どんなお仕事に就きたいですか?メタバースでは、さまざまなクリエイターが活躍するチャンスがあります。ファッションショーをしたり、お洋服を販売したり、アートギャラリーを開くこともできます」
実際にワールドを見せ……「重要なのは、これらのコンテンツは個人のクリエイターが作りあげているものが多いということです。メタバースとって、クリエイターは非常に大事です」
3. メタバースで、企業がマーケティングをする
「近い将来、企業は、店舗(直接消費者と対話できる場所)、SNS、ECサイト、そしてメタバースの4つのチャネルを持つようになると思います。3年後にはメタバースを使い、お客さんに商品、サービスを提供しているはず。ブランドプロモーションの立場の人間が言うのだから、間違いありません。
メタバースは、商品の販売だけでなく、エンゲージメントを高め、特別な体験を提供することができます。メタバースは、見た目や年齢、性別や国籍にとらわれず、自分の好きなこと、得意なことが自由に表現できる世界です。セカンドジョブ/セカンドキャリアとの親和性も高いです」
4.メタバースファッション、どうしたら楽しめる?
「メタバースのファッションを考えるうえで大切なことは、リアルの世界と同じ感覚だということ。例えば『洋服可愛い。どこで買いましたか』と聞かれたら嬉しいし、みんながオシャレをしているのに、自分だけデフォルトの格好だと恥ずかしくなったりします。他にも、『アーティストのライブに行こう』というシーンなら、アーティストのツアーTシャツを着ようと盛り上がる。リアルで感じていることと同じなんです」とメッセージ。<スピーカー:NAVER Z Japan株式会社 JAPAN Business Lead 加嶋雄一様>
加嶋様「NAVER Z Japan株式会社にて、企業さんの商品をグローバルに発信するお手伝い、提携交渉やプロモーション、クリエイターさんの育成、マーケティングを担当しています」
メタバースの魅力の中でも、「Experience 物理性がもたらす制限の排除」について触れ、「ZEPETO」のワールドで行われた 世界的人気アーティストの生中継放映や、「フォートナイト」内で開催されたLIVEを紹介しました。
「実際の会場には人数制限がありますが、メタバースでは人数制限がありません。ここでしか得られない経験を提供しています」
1.メタバースの発展に必要なものとは?
「まずは、クリエイターです。今はメジャーなサービスもメガインフルエンサーによりグロースしてきました。次に、コンテンツ制作です。ZEPETO Studioという開発環境を提供しているので、自分だけのアイテムやワールドを作って世界に発信することができます」
2.海外&国内クリエイターの成功事例
既にメタバースでビジネスを成功させているクリエイターもいます。例えば「Lenge」のアイテムは総売上100万個以上でZEPTO内にインフルエンサーマネジメント会社を設立。また、「ZDE」のアイテムは総売上300万個以上の販売を記録しています。
3.必要とされるスキル
「MayaやBlenderといった3DCG制作ソフトのスキル、Unityなどゲーム制作ソフトといった『クリエイティブスキル』、エンジニアであれば『プラットフォーム開発スキル』は重要です。しかし、これからは、作るスキルは当たり前になってきます。プラスαで、コミュニケーション能力、マーケティング、プランニングといったスキルも求められます。技術単体ではなく業界を俯瞰でみられる人材が活躍していくでしょう。社内制作には限界があるので、プラットフォーム運営側が作るというよりも、個人クリエイターが必要となる可能性が非常に高いです」
4. メタバースの成長=クリエイターの活性化
「メタバースの発展のためには、プラットフォーマーとクリエイターを育成が不可欠です。プラットフォーマーの役割は、クリエイターの参入ハードルを下げること、表現物のクオリティを上げること、コンテンツを欲しい人に届けること。対して、クリエイターの役割は、ファンコミュニティや発信力を身に付けること。作る能力+発信する能力を身に着けていただければ、メタバース上で生計を立てることも夢ではありません。誰でもクリエイターになれます。ぜひZEPETO Studioでオリジナルアイテムを配信してください。今から挑戦することで、3年後にイニシアチブを取る人材になると思います」
<後半:グループトークセッション>
――― 改めて、ZEPETPOの強みは?
加嶋様「アバターです。顔の彫りや立体感など精密性を上げました。目や髪の色など、10箇所以上カスタマイズできます。交流の要であるワールドも、ユーザーが掲示板を作るようにワールドに部屋を作ることができます。一つのワールドに入れるのは2〜24名のみと丁度いい塩梅にしています。SNS要素も強いサービスで、ワールドで撮った写真やスクショした画面をワンタッチでフィードに投稿出来る機能もあります。ZEPETOでのトレンドも生まれています」
島田様「ZEPTETOは、毎日訪れても違った楽しみ方ができますよね」
――― では、メタバースに今後必要なことは?
加嶋様「空間を作るだけでは全然ダメで、来る必然性が非常に大事です。ユーザーが仮装世界でどういった欲求があるのかとリンクさせます。例えば、友達を作りたい、有名になりたいという欲求があるなら、UGC(ユーザー生成コンテンツ)をフックにします。頑張るユーザーをピックできる仕組みやコミュニティを盛り上げる仕組みを作り、手軽に早く有名になれる環境を作っています」
島田様「メタの中に全然違う空間を作るものだと思われますが、決してそうではないんですよね」
――― 野尻さんは、将来クリエイティブな仕事に就く在校生を考えたときに、メタバースの将来性についてどのように感じますか。
野尻さん「バンタンデザイン研究所には、ファッション感度の高い人や、自分でブランドをやりたいという目標を持った人が多いです。卒業した進路先で考えれば、職種の広がり、働き方の広がりという二つの視点で良いと思います。パタンナーや生産管理といったこれまでの職種に限定されず、メタバースで自分のブランドを始め、デザイナーにもなれます。個人で働き、しっかり稼げるという点でも可能性を感じます」
――― では、在校生には、どのようなことを期待されますか。
野尻さん「CLOを導入したプロジェクトへの参加メンバーを募集しところ、定員を上回る結果となり、在校生が興味を持ち始めている状況でした。メタバースに興味を持ってもらいたいですし、新しいことを吸収してほしいです。3年後に花開くとすれば、今始めれば、先陣を切れますし強みにもなります」
――― なるほど。高橋さんは、実際に、3DCGモデリングを活用されていますね。
アダストリア生産パターンチーム 高橋拓海様(写真左)「メンズブランドHAREのパタンナーとして、CLOを使ったお仕事をしています。3Dシミュレーションを使って検討し、洋服の完成度を高めています。導入するメリットは、商品作りの前にサンプルを作るのですが、サンプル段階で通常は3回ほど修正します。そこに3Dを導入することで、1度はバーチャルで検討し、2度目で初めて実物サンプルを作るためコストを省くことができます」
島田様「アパレル企業での導入は増えていますよね」
――― 最後に、メタバースがこんな世界になったら良いという理想はありますか?
野尻さん「今、言語の壁があると思うので、言語が自動的に翻訳されたりするといいですね。世界中のクリエイターとコミュニケーションが取れるのが理想です」
――― メタバース、どうなったらバンタンデザイン研究所在校生が使いますか。
野尻さん「部活なのか自主的になのか、場面設計が必要だと思います。必要なスキルでMayaやBlenderと聞くと敷居が高い感じがするので、簡易的にカスタマイズできるような機能が充実すると、在校生クリエイターもより参入しやすくなると思います」
加嶋様「自分が好きなアーティストやインフルエンサーに会えることが、キッカケになるのでは?」
島田様「同感です。アダストリアのドットエスティアプリにある機能で『STAFF BOARD』というコンテンツがあり、全国のショップスタッフがスタイリングを毎日上げています。例えば、鹿児島の店舗スタッフに会ってはなしたいと思っても、とある青森の高校生とリアルな世界で話すことは難しいですが、メタバースならお喋りができます。そうした物理的な制限を軽々とこえることができるのも、ひとつの可能性だと感じます」
参加したバンタンデザイン研究所高等部3年・石月さんは「卒展のテーマが『メタバース』だったので、学びになることが多かったです。販売職やデザイナーなどさまざまな分野を目指す人にとって、お仕事として可能性があると感じました」と話します。
スペシャルなランチをいただいた後はグループワークを行い、メタバースへの理解を深めアイデアを出し合いました。
今後のプロジェクトの展開に、期待が高まりますね。