年度末制作展ヘアメイクショー「AMBITIOUS」をシューティング。SPRING、SUMMER、AUTUMUN、WINTERをヘアメイク&衣装で表現!BACK STGAEをレポート【バンタンデザイン研究所】
ヘアメイク基礎科生が、1年間の学びを披露するイベント「年度末制作展」にてヘアメイクショーを開催しました。
2021年は、ショーを収録して配信する形式を採用。
迎えた、ムービー&スチール撮影本番の日。緊張感溢れるバックヤードに密着しました!
<SHOWの動画はこちら>
<SHOWの背景>
学生たち自ら、ショー全体のコンセプトからテーマまでを設定しています。
コンセプトは「自分自身への挑戦、心に秘めた大きな望み」。
この日のショーに至るまでのThoughts(想い)とは、何でしょうか……?
学生たちの言葉を借りると「普段できることも、今年はできない。力を発揮しにくい。もどかしさがつきまとう。
だけど、そこにはいつも、心に秘めた大きな希望が隠れている。自分の物語を今、自分自身への挑戦としてひとつの作品にする。
技術は自分のものにできた時に、素晴らしい作品が生まれる」を掲げています。
ショーは、Spring/Pure、Summer/Passion、Autumn/Conflict、Winter/Bitingの4部構成。季節が移り変わるように、
揺れ動いていく繊細な気持ちを、ヘアメイクで表現します。
指導してくださるのは、メイク担当・AKII講師と、ヘア担当・生井澤勉講師。
<Spring/Pure>
二瓶さんのテーマは「花が開く瞬間。春の心躍る感情を、花で表現したら面白いと思いました。
リハーサルで講師から『もっとインパクトが欲しい』というアドバイスを受けたので、衣装に付ける花を増やしました」
特に注目してほしいのはヘアエクステで作った、ヘッドピース。造花と見間違うほどのクオリティですが、実はこれ、ヘアエクステで成形されています。
ヘア担当・生井澤勉講師に教えてもらった技術を活用しているそう。
「Symbol of Freedom」をテーマに掲げた中村さん。「春は新学期など、ワクワクした気持ちを感じる季節。自由な雰囲気を表現したいと思い、
自分の中で自由のイメージに合った『風船』型のヘアにしました」
衣装には、ペーパークラフトの花を使い「芽吹き」を表現。そこに、ショー映えするギャラクシーメイクを掛け合わせました。
「個人的にグリッターメイクを極めていきたいと思い、挑戦することにしました。ポイントは、青とピンクの境目をボカすことと、
グラデーションの濃淡をしっかり付けること。挑戦したことで感覚がつかめたと思います」と話します。
「他の人と違う感じにしたかった」と話すのは、下谷さん。
「真っ白なキャンバス」をテーマに、「春は出会いもあれば別れもある。仲間をリセットしてスタートしていくイメージがあったので、
オフホワイトなキャンバスに、これから色を乗せていく状態を作りました」。ヘアエクステで作ったマスクは、近くで見るとその流線美に驚かされます。
「派手な色を使うクラスメイトが多いけれど、私はシンプルにしたかった。衣装にはオーロラの布をプラスして、
真っ白だけれど華やかで前向きな気持ちも表しています」と解説。
他にも、竹田さんの「イースター」、畔柳さんの「新たな一歩」などカラフルでヘッドピースもインパクトのある作品がお披露目されました。
<Summer/Passion>
ムービー収録直前。廊下で、真剣にヘアメイクのお直しをしていた高桑さん。
「テーマは『金魚鉢の中の私』。ヘアメイク業界という鉢の中で過ごす自分、という意味合いです。
メイクをシンプルにまとめたのは、ショーで目立たせたかったから。たくさんのアイテムを盛って目立つのは当たり前。引き算で綺麗な作品を作りたかったんです」と、
こだわりを明かします。
山田さんの「メタモルフォーゼ」は、とあるテレビアニメのキャラクターからインスパイアされた作品。「衣装は、キャンディーをまとっているイメージです。
服は専門外なので、スタイリスト科の学生に提案してもらいました。元気な魔法少女をイメージしていました」
ウィッグとエクステンションで作った紫色のヘッドピースに、衣装とリンクしたキャンディーを装飾して華やかに。
<Winter/Biting>
佐藤さん「『のぞみ』というテーマで作りました。『明るい希望』という花言葉を持つアネモネを、ヘアエクステで作っています。
一人ひとりが明るい希望を持てるように、という想いを込めて作っています」花の角度や、ヘッドピースとしての安定性にも力を入れたそう。
「ショーは、作品が派手になりがちですが、シンプルなヘアメイクに仕上げたいと思いました。モデルさんのデコルテには、花の葉脈をイメージしたペイントを描いています」
西出さんは「アオイライトという天然石をテーマにしています。
石言葉に『正しい方向に前進する』という前向きな意味があります」
今回のショーで難しかった点は「冬チーム全体のコンセプトを固めるまでに時間がかかりました。
あとは、ショーでどんな照明が当たるのか考えておくことが必要だと分かりました。リハーサルのとき、私のヘアメイクは照明とメイクの色がマッチしていたので
綺麗に見えましたが、今後は作品を作る段階から、どんな色の光が当たるのかを考えながら作りたい」と新しい視点を得ていました。
こうして、すべての作品がスチール(静止画)の撮影を終え、いよいよムービー収録本番にのぞみます。
大音量でBGMが響き、モデルたちが颯爽とランウェイを闊歩していきます。
フィナーレでは、暗闇からパッとライトが灯り、SPRING、SUMMER、AUTUMN、WINTERのオールモデルがステージを席巻。
順調に、すべてが撮れたかと思いきや……モニターを見つめる学生ディレクターは渋い顔。「ごめんなさい!もう1回撮影します」
「フィナーレでは、この枠から出ないように歩いてください!」と、モデルさんに向かって呼びかける学生。フロアにガムテープをはって動線を説明する学生も。
完璧なクオリティで撮影するため、妥協は許されません。イメージ通りに見せるべく、フィナーレは3回収録し直しました。
収録がすべて終了すると、モデル、学生、講師からも自然と盛大な拍手が巻き起こりました。
最後にインタビューしたのは、ショー全体のディレクションも務める工藤さんです。
<Autumn/Conflict>
工藤さん「テーマは『uneven』です。秋の感情テーマである『conflict』(対立、衝突の意)から、さまざまな感情の対立、
浮き沈みの様子をヘッドピースで表現しました」
ヘッドピースには、うねうねとした波もあれば、カクカクと角ばった形状がランダムに配置されています。定まらない感情の変化を、
そのまま立体で表したそう。「感情は、揺らぐし抽象的なもの。なので、表現するのは難しかったです。でも、ヘッドピースの形や色で、
内面を置き換えられたと思います」と自信をのぞかせます。メイクは、金属のような光沢感とツヤのあるメイクを合わせました。
ショーを俯瞰(ふかん)で見た感想を聞くと……
「みんなが思い描いていた仕上がりになったと思います。
今回のショーは、オープニング映像もグラフィック科の学生に協力してもらい、芽生えて、成長して枯れて……
という四季のイメージも映像化することができました。世界観にあった選曲もできたし、一人ひとりのやりたいことが発揮されていると感じます」と
晴れやかな表情を浮かべていました。
「自分の物語を今、自分自身への挑戦としてひとつの作品にする」というショーの概念通り、学生たちはパーソナルな感情や物語を、
作品に昇華させることができました。予測不可能な時代こそ、先を明るく照らすような、新しいクリエイションが求められています。
1年次に培った技術を、2年次はさらに磨きをかけ、価値ある作品を生み出していってくださいね。