卒展「INNOVATION」スチール撮影レポート。ヘアメイク&WSヘアメイク本科が放つ、集大成クリエションとは?【バンタンデザイン研究所】
いよいよ来月に迫った卒業修了制作展。略して卒展。
ヘアメイク本科、WSヘアメイク本科生たちが、メイクルームで作品の準備に励んでいます。
今回、撮影するショットは、卒展で行われるヘアメイクショーの「演出」に用いられます。
作品を紹介するだけでなく、モデルさんがランウェイに登場するまでの期待感を高めるためのスチール写真。
さっそく、各学生のテーマを、深堀りしていきましょう!
<EVOLUTION:ゴスロリ>
伊奈さん「ショー全体テーマは『INNOVATION』です。
私が注目したのは、ロリータの進化。古いロリータが進化して『夢かわいい』ジャンルが築かれたと思うので、テーマは『EVOLUTION』にしました」
メイクは、上下のラインにオーバー気味にまつ毛をのせ、ピンクのアイカラー、マスカラとライナーは黒を使い、目元をしっかり強調。
伊奈さん「普段のターム(学期)撮影なら、撮影して終わり。でも、卒展なので撮影からショーまでトータルで行います。撮影を終えても、
ショー当日まで作品を改良できます。最後なので思い入れも強く、ショー本番まで気が抜けません」と話します。
<ミラーボール>
特殊メイク科も、準備に励んでいます。メイクルームでは、塩化ビニール板ミラーを黙々とマスクに付けている学生が。
特殊メイク科今井さん「テーマは『ミラーボール』。撮影は、前面だけでも撮れますが、ショーは360度見られます。
モデルさんが動くことを考えてヘッドピースを作らないといけません。特にショーは緊張しますが、やり終えたときの達成感は格別だと思う」
衣装担当・土屋さん「『ミラーボール』の衣装は、防災グッズのアルミシートで作っています。私たちは、着ぐるみ形式なのでヘアもメイクもしません。だからこそ、
ミラーボールのキラキラ感をしっかり作りこみたい。衣装やヘッドピースを完璧にして、満足いく作品にしたい」と、ディテールにこだわって作業を進めていました。
スタジオに移動すると……モニターを真剣な表情で見つめる講師の姿が。シューティングに立ち会うのは、業界で活躍するヘア井出講師、メイクNao講師、
スタイリング尾崎講師です。
<Unknown-未知->
廣滝さん「サブタイトルは、sky fish。スカイフィッシュは、空中を高速移動すると言われている未確認物体のこと。ぶっ飛んでいる感じの、
誰も見たこともない作品を作りたかったんです」
宮部さん「コンタクトもメイクも、ネオンカラーなど奇抜な色を入れています。顔は白く塗り、人間味を無くしています」
たくさんの球体を使った、天体模型のようなヘッドピースに、グリーンの透け感あるトップス、三つ編みした布を大量に貼りつけたオレンジのパンツ。
浮世離れした雰囲気が、「未知」への興味を掻き立てます。
<DRUG>
仕立さん&増山さんの作品は「DRUG」
「かつて、戦争が終わった時に、人びとは抑うつした気持ちをドラッグで上げていたと知りました。私たちなりに、可愛らしいドラッグをテーマに、
見る人に高揚感を与えるような作品を作りたいです」と仕立さん。
衣装は、サイケな雰囲気を表現するため、異なる素材、質感、カラーをミックスしているのが特徴。ヘアは無数の編み込みを作り、ランダムに動きを出します。
増山さん「トルソーに着せて作るのと、実際にモデルさんに着せるのでは違います。インパクトを出すため肩にパッドを足しました。CUTTING EDGE
(学内最大級のデビューイベント)では白黒がテーマの作品を作ったので、表現に制限があったけれど、今回は自由に色を使えるから楽しい」
仕立さん「最後の制作なので、100%の力でのぞみたいです。賞を獲ることも、もちろん考えています」
スタジオに移動してシューティングスタート!
「ポージングはどうしたい?手を上に上げている感じは、キメすぎていて、あざとく見える」とNao講師。
仕立さん「正面を向いているのがいいです!」
井出講師「髪は、もっと動きがある方が可愛いね。ワイヤーを入れてみたら?」
モニターを見つめている尾崎講師も「手を上げると立体感が出るね。でも、スタイリングとしては少し寂しい感じがする。もう少し頑張ろう!」
とアドバイスを受けました。期待されるレベルも、これまで以上に高いものであることがうかがえます。
<Napoléon Bonaparte×KING KONG>
加藤さん「18世紀後半のフランスでは、不平等な封建制度や浮上により革命が起きました。フランス革命で活躍したナポレオン・ボナパルトのように、
現代のコロナ禍は、ある種の変革期で、より平和で新しい時代の到来に繋がるのではないかと考えました」
福澤さん「ドイツのアート雑誌『KING KONG』に掲載するイメージです。常識にとらわれず新しい表現をする雑誌で、作品との親和性が高いと思いました」
砥の粉(とのこ)を水で溶き、モデルさんの全身に塗布。乾燥すると、今にも剥がれ落ちそうな皮膚に似た仕上がりに。
「新しい時代に脱皮していくようなイメージです。ヘッドピースは『面を綺麗に見せたい』と思い、エクステを束ねて波打つような形にしました。
これまでのイベントよりも規模感が大きいので、より力を感じさせる強い作品にしました」と、加藤さん。
シューティングを終えて、屋上での撮影も続行。自分たちの作品を客観視することで、ショー本番までに、更なるアップグレードを狙います。
他にも、男尊女卑の問題を提起した「女性大統領」、ファンタジーな「CLOWN」など、すべてのチームが、シューティングを終えました。
ショー本番まで、残された時間はわずか。短期間で、いかにブラッシュアップできるのか?卒業学年の手腕が、問われています。