N.Y Fashion Weekにデジタル参加決定!スチール&ムービー撮影現場をレポート。YONLOKSAN(ヨンロクサン)デザイナー新國あおいさん/バンタンデザイン研究所 大阪校
ここは、東京都内のオフィスビル街。
大都会のビル街に、Asia Fashion Collection 8th 日本代表デザイナーの姿がありました。
2021年は、日本代表デザイナーはNYファッションウィークにデジタル参加することになりました。あらかじめ、ブランドのムービーを制作し、
イベントにてお披露目される形です。
朝7時半からスタートしたシューティング。
バンタンデザイン研究所在校生・デザイナー・冨山 華緒(トミヤマ カオ)さんによるkaoism(e)(カオイズム)の撮影中、
コレクションにスチーマーをかけていたのが、YONLOKSAN(ヨンロクサン)(@yonloksan)デザイナーの新國あおい(ニイクニ アオイ)さん。
「YONLOKSAN(ヨンロクサン)というブランドをしています。まず、ヨンロクサンは野球のプレイのこと。ふたつのアウトを取るプレイで、
当たり前にやらなきゃいけない、いわば日常的なプレイですが、その中には技術がいっぱい詰まっています。その様子を、自分の洋服で表現したいと思い
ブランド名に冠しました。日常的に着られるけれど、ギミックのきいたデザインを目指しています」
今回のテーマは「インターセクション。意味は交点です。グラフの交わりもそうですし、交差点という意味もあり、人と人の交わりの交点とも解釈できます。
いろいろな受け取り方ができるテーマです」
kaoism(e)が撮影を終えて、モデルさんたちがフィッティングルームに戻ってきました。着替えや洋服の整理を、無言で手伝う新國さん。
早朝にスタートしたシューティングですが、すっかり日は暮れて夜の帳が下りています……。
「今、1時間押しなので、自分のブランドで手際よくフィッティングをし、時間を巻きたい」と真剣な面持ちで撮影準備に取り掛かります。
着替えは「フィッター」と呼ばれるスタッフがサポートしてくれます。指示書には、着せ方の詳細が書かれていて、トップスのインorアウトから、
紐の結び方までを指定しています。
資生堂・ヘアメイクアップアーティストの門馬さんは、YONLOKSANのメイクについて「メイクをした感じは出したくない、というオーダーだったので
『スーパーナチュラル』に仕上げています。リップもモデルさんの唇の血色感を活かした控えめなカラーです」と解説。
準備を終えたモデルと共に、地下駐車場へ移動し……「デザイナーの新國です。よろしくお願いいします」と、フォトグラファさんにご挨拶。
フォトグラファ「よろしくお願いします。場所は4パータンを想定しています」と、オススメの場所へ移動し、画角を決めていきます。
「ここもいいけれど、明かりは逆光になってしまいます。いちばん光が綺麗なのはスロープです」と、助言するフォトグラファー。相談した結果、
スロープで撮影することに。「丁寧に見えすぎないように、とこちらの希望するイメージを伝えました。荒っぽさが出るように撮ってくれたほうが面白いと思っています。
背景のスロープは、だまし絵っぽくも見えて、いい意味で写真らしくない雰囲気が気に入りました」と、新國さん。
こうして、撮影がスタート。
モデルAOIが着ているのは、ハイウエストパンツにサスペンダーがついたボトム。野球のヘルメットをイメージした帽子には、ブランドロゴの刺繍入り。
「ゆっくり歩いてきてください」「顔だけ、振り返れますか?」と、モデルにリクエストするフォトグラファ。2020SS東コレランウエイでも活躍したモデル・
TSUKINAを筆頭に、センス抜群の精鋭が揃います。モデルたちの勘も鋭く、ひとり10分ほどで、テンポよく進んでいきます。趣味だというフィルムカメラで、
オフショットを撮影する新國さん。シューティングを終えたモデルさんに駆け寄っていき、お礼を伝える律義さも垣間見えました。
ASHLEYがまとうコレクションは……
新國さん「トレンチベルト、アリとナシ、両方を撮ってもらえますか?」と自らリクエスト。
「コートの上からトレンチベストを羽織るのも可愛いです。ジャケットも、袖の長さを調整でき、着方で遊べる仕様になっています。
ボトムには、野球ユニフォームのようにベルトループがついているのがポイント」と解説。
ELENAのルックは、アウトタックとインタックで立体感を出したロゴトレーナーに、ハーフパンツとスラックスを合わせたルック。
「スラックスは、バスケのジャージから着想を得ています。横空きになっていて、ボタンで留めることができます。野球やバスケなど、スポーツからヒントを得た
デザインも多いです」と話します。
スチール撮影を終えた新國さんに、話を聞きました。
――― NYへの意気込みは?
「正直、未だ自分で良かったのかなという不安はあります。光栄ですけれど、恐れ多い。未だまだ足りないものがあると発見できた、と感じています」
――― 他ブランドの撮影を見て感じることは?
「色んな人の力を借りて、映像作品が成り立っていると実感します。
今回、撮影したムービーも、最終的にはとても短い動画に編集されます。短い映像のために、ものすごく長い時間がかかっていて、たくさんの準備があります。
圧倒されましたし、知らない世界なので勉強になりました」
――― 2020年10月15日に行われたTOKYO STAGEでの発表から、コレクションがブラッシュアップされていますが、その際に心がけたことは?
「よりAWっぽく、生地の厚みやアイテムの構成を考えるようにしました。また、以前に作ったときとテンションの差が出すぎないようにしています。
他のデザイナーに引っ張られる部分もありましたが、前のコレクションが劣って見えないように、差をつけすぎないことを意識してデザインしました」
――― そもそもですが、AFCに出ようと思った理由は?
「やってみたら?と、講師に声を掛けていただいたから。大阪校の入口に、AFCのポスターが貼ってあったので気になっていました」
――― 参加して、得られたことは?
「短期間で決まったものをあげなきゃいけない、という厳しさ。決まった時間内で納めるためには計画性も大事だし、なんとかする力も大切。
授業でやる課題とは異なり、完全に締め切りが決まったスケジュールでやり切ることが勉強になりました。また、別の学校でファッションを学んでいる、
知らない人たちの作品も間近で見られて、世界が広がったと感じます」
――― 今後、YONLOKSANをどのようなブランドにしていきたい?
「今は、小さくやっていくことを想定しています。例えば、工場の縫製のアルバイトなどで技術を学びつつ補い、ブランドに還元し、少しずつ説得力のあるデザインを
できるようになりたいですね。今シーズンは、野球やバスケなどにインスパイアされたデザインを多く発表しました。
デザイナーの大岩 Larry 正志さんを尊敬しているので、未だ形にはなっていませんが、いずれはスポーツ業界に貢献できたらという気持ちもあります」
と展望を語ってくれました。
「日常的に着られるけれど、ギミックのきいたデザイン」を、NYFWでも存分に伝えてくれるはず。YONLOKSANの打ち出すニューノーマルな価値に、期待しています。