<特別授業>Welcome to LOEWE! LVMH ファッション・グループ・ジャパン株式会社 ロエベ ジャパン マーケティング & コミュニケーション シニアディレクター 澤井 愛佳様をお招 きして講演会を実施【バンタンデザイン研究所】
バンタンデザイン研究所では、業界で活躍するプロフェッショナルから学ぶ機会が豊富です。今回は、LVMH ファッション・グループ・ジャパン株式会社 ロエベ ジャパン マーケティング & コミュニケーション シニアディレクター 澤井 愛佳様をお招きし、「ワールドクラスのビジュアルづくり・マーケティングの世界」と題した講演会を実施。
「私自身のキャリアをご紹介します。大学時代に参加したインターンが面白かったことを機にKDDIアメリカへ入社。外資広告代理店を経て、4年前からロエベでマーケティング & コミュニケーション ディレクターを務めています」と、自己紹介。
<1. About LOEWE>
「ロエベは1846年、スペインのマドリードで革小物の工房としてスタートしました。今年、日本展開50年を迎えます。クリエイティブ ディレクターは、2013年からジョナサン・アンダーソンが務めています。創造性に富んでいて、常に新しいアイデアを提案しています」
写真家ユルゲン・テラーとジョナサン・アンダーソンが手がけるロエベの24SSキャンペーンでは、マギー・スミスや、グローバルアンバサダーを務めるNCT テヨンが登場。
「また、ビヨンセのルネッサンス・ワールド・ツアーでも、さまざまなブランドがコスチュームデザインで参加していますが、ロエベのデザインは話題を集めました」
スタジオジブリと、3年連続でコラボを実施。おなじみのキャラクターたちが、創造的なアプローチによって、ロエベのアイコニックなバッグやウェア、レザー小物に宿ります。
2022年1月7~16日の期間限定で、スタジオジブリの映画「千と千尋の神隠し」の世界観で期間限定店をオープン。「オープン日は初雪でした。スタジオジブリさんが提灯などを貸してくださったんです。また、『千と千尋の神隠し』で花咲く庭を進むシーンが体験できるウェブサイト(http://loewe.cm/HARAJUKU)を、日本独自で特設しました」と振り返ります。
「23年11月11日には、フラグシップストア『カサロエベ表参道』をオープンしました。また、ロエベの日本展開50周年を祝して、日本の陶芸制作ユニット『スナ・フジタ』とコラボレーションした『LOEWE x Suna Fujita コレクション』が店頭に並びました。ファンタジックな夢のある世界を感じていただけます」
<2. “Power of Hands”>
「ロエベが、いちばん信じていることは、“Power of Hands”です。私たちは、手で作られたものすべてをクラフトと解釈します。近代アートというと、文脈があり批評性があると思いますが、対してクラフトは工芸品のイメージや、時が止まっているような印象もあるかもしれません。ロエベのミッションは、クラフトを前進させることです。人々の意識と共に進化していく、そんなパワーを持ったブランドになりたいと思っています。また、既存の在り方を踏襲した、いわゆる『ラグジュアリー』ではなく、ラグジュアリーの概念を一新することもミッションのひとつです」
Power of Handsを体現する事例として、クラフトマンシップを称える国際賞「CRAFT PRIZE」をあげます。ロエベ財団 クラフト プライズでは、入選作品がニューヨークでの展示や賞金が授与されるなど、制作活動をサポートしています。
2020年には、衣装家・北村道子を起用し、日本独自のキャンペーンを展開。
「強いアイデンティティを持ち、とてもオシャレな方です。日本発のキャンペーンを行うことはチャレンジングでしたが、結果的に20・30代からも支持をされるようになりました」
<3. What is BRAND?>
「ここからは、ブランドについて考えます。そもそも、リテールビジネスとは何でしょうか?母体として商品がありますが、商品だけではブランドはできあがりません。美しい店舗、心地の良い接客、ビジュアルマーチャンダイジング、広告、PR。また、イベントやSNSで、何をどのように発信していくのか?LOEWE.comやメディアなども、ブランドイメージの形成に欠かせません。また、店舗に芸能人やセレブリティーにお越しいただき、どんなことをしてもらうと効果的なのか。こうした複合的な事象から、ロエベの印象が形づくられていきます。最終的には『How you feel……?』。ブランド自体は形がハッキリしているものではありません。変わるものもあれば、変わらないものもありますし、フィーリングとして何が残せるのかが問われます」
<4. 北野武を迎えた「FW22 メンズキャンペーン」>
また、FW22 メンズキャンペーンでは、北野武、村上虹郎、柄本時生を起用。
さらに、millennium parade & PERIMETRONのメンバーとしても活動するOB・森洸大、佐々木集らを異なるシチュエーションで撮影。
「原宿のセレクトショップ・GR8(グレイト)をパートナーに迎え、実現したキャンペーンです。PERIMETRON(フェルメトロン)の西岡プロデューサーと企画を進めました。背景として、ロエベは女性からの支持が高く愛されてきましたが、一方でメンズの存在が弱い側面がありました。そこで、日本発で、世界が驚くようなインパクトのあるクリエイティブを作りたいという目標を設定。男性が、最も好きな男性は?と考えたときに、キングである北野武さんにオファーするのがベストアンサーだね、という結論に至りました」
フォトグラファーには、モンゴル自治区出身の新人写真家・Ryu・Ikaを抜擢し、グローバルで大きな反響を呼ぶことに。在校生から「新人ということですが、どのように見つけたんですか?」と質問が。「アートプロデューサーが、彼女を推薦しました。また、PERIMETRONの西岡さんが、麻雀のアイデアを提案してくれました」とエピソードを明かします。
<5. 米津玄師と「FW23メンズキャンペーン」でコラボレーション>
「写真家・アルノー・ラジュニが、音楽家・米津玄師さんを撮影したロエベ 2023秋冬メンズ コレクションは、クオリティが非常に高いと思います。国内外問わず、世代を越えて影響力がある方で、かつ今期のロエベが着こなせる人を考え、米津玄師さんにオファー。アーティストの創造空間へディープダイブするというコンセプトのもと撮影しました。日本の消費者は、こうした細かい工夫に反応するハイコンテクスト※1な傾向があります」
「企画するときに重要なのは、近しいリファレンスは何なのか、自分の中でしっかりと持っておくこと。ただし、ビジネスパートナーに自分の思っていないものを出してもらうかの塩梅は非常に難しいです。仕事相手が、どれくらいその企画のビジョンを持っているのかがとても大事です。相手の意見が理解できるまで、貪欲に質問しましょう!良い質問を投げて、クリエイティブの輪郭をハッキリさせていくべきだと思います」
<6. BRAVE, NOT PERFECT!>
「最後に、私が大切にしている言葉 “BRAVE, NOT PERFECT”という言葉で締めくくりたいと思います。自分の人生は、自分が主役。完璧でなくても、勇敢であるほうが大事です。ぜひ、皆さんには勇敢でいてほしい。また、自分の努力が先に続いているのか?常に意識してください。女性は、家族をもって活躍できる時代。ぜひ、そこも諦めないでいってほしいです」と、在校生をエンパワーメントしてくださいました!
特別授業を終えてもなお、在校生の熱量は高く、たくさんの質問が寄せられました。
――― 学生時代に、身につけておくべきことは。
「スピーディに良いものを作れること。基礎的なPhotoshopとかIllustratorといったPCスキルはできると良いと思います」
――― 仕事で大切にしていることは?
「最初に依頼させていただくとき、情熱をエレガントに表現できるか。企画書やお手紙で、どれだけ自分の熱意が伝えられるかは大事だと思っています」
――― クリエイティブ力の上げ方は?
「自分で思いつくアイデアは少なくても、『いけるんじゃない?』みたいな気持ちは大事にします。好奇心はドライバーとして大事ですし、面白いアイデアをくれそうだなという人と、どれだけ仕事ができるかも大切です!」
バンタンデザイン研究所では、在学中から業界をリードするプロフェッショナルに指導をしていただけます。
ファッション業界、フォトグラファー、デザイナーなどさまざまな職種を志すメンバーにとって、非常に学びの多い時間となりました。
LVMH ファッション・グループ・ジャパン株式会社 ロエベ ジャパン マーケティング & コミュニケーション シニアディレクター 澤井 愛佳様、お忙しい中ありがとうございました!
【PROFILE】
澤井 愛佳氏
NY生まれ、横浜・バンコク育ち。NYU卒業後、KDDIアメリカにて新規事業立ち上げに従事。フロンドエンド・バックエンドの開発、サービス運用の基礎を学ぶ。前職AKQAでは、グローバルブランドのプロジェクトに多数携わる。2019年10月より、現職。ロエベでは、日本発のキャンペーンやプロジェクトの企画を遂行。プライベートでは、育休中にフルリノベを行いマンションに夫、息子と3人暮らし。